この教本の使い方

本書の対象読者

本書は、LLMの機能を実際の製品に組み込むバックエンド・フルスタック開発者と、AI機能のPoC(概念実証)を本番運用へ移すエンジニアのために書きました。HTTP APIを1年以上扱った経験があれば十分です。リクエストとレスポンス、ステータスコード、リトライ、JSONといった言葉になじみがあれば、本書のほぼすべての内容についていけます。

PoCと本番の機能には、思いのほか大きな差があります。PoCでは「だいたいうまく動く」が目標ですが、本番では、1日数万回の呼び出しのうち形式が崩れる1件、二重実行される決済1件、予告なく増える費用の項目1つが問題になります。本書はその差を埋めることに集中します。モデルを自分で学習させる方法や、GPUクラスターの運用方法は扱いません。扱うのは、ベンダーが提供するLLM APIを、アプリケーションの部品として安全かつ経済的に使う技術です。

本書の構成

本文では、昇級審査の5つの出題領域を1章ずつ扱います。

章 扱う問い
第1章 APIの基本とメッセージ設計 リクエストの何をどこに入れ、どのモデルとパラメータを選ぶか
第2章 構造化出力とツール呼び出し モデルの答えをプログラムが信頼して使える形で受け取り、外部の機能とどうつなぐか
第3章 パフォーマンスとコストの最適化 ユーザーの待ち時間と会社の支出をどう減らすか
第4章 信頼性とエラー処理 失敗しても同じ処理を二重実行せず、自動で回復するにはどうするか
第5章 評価と運用 変更前に数値で確認し、運用中は何を監視するか

各章の構成は共通です。「学習目標」と「はじめに」で方向を定め、「重要な概念」で試験範囲の知識とスキルをすべて説明します。「さらに深く」ではトレードオフと失敗の分析を扱い、「実務の場面」では架空の組織の問題を、発端から意思決定まで追います。「間違えやすいポイント」では試験の誤答選択肢が狙うものと同種の誤解を扱い、「ひと目でわかるまとめ」は試験前日の復習用です。セルフチェックは試験と異なり記述式です。選択肢なしで概念を自分で取り出して使えるかを確かめるためで、解答と解説は付録Bにまとめました。1章だけ選んで読んでも理解できるよう、他の章の内容が必要な箇所では、その場で短く説明し直しています。

試験の概要

項目 内容
コース LLM API開発者(LAD)、赤帯の昇級審査
昇級審査 30問、50分、素点70点以上で合格
無料練習セット 10問、20分
配点 記憶・応用問題は2点、判断問題は3点。素点は満点に対する獲得点の割合(百分率)
等級 素点90・80・70・60・50・40・30・20点を境界とする1~9等級
出題比率 第1章20%、第2章25%、第3章20%、第4章20%、第5章15%

問題形式は、単一選択、複数選択、正誤判定、並べ替え、組み合わせの5種類です。審査の問題用紙では、すべての問題で①~⑤の番号から1つを選んで答えます。複数選択では〈選択肢〉のア・イ・ウの組み合わせから1つを、正誤判定では正しいと判断した記述の組み合わせを、並べ替えと組み合わせでは順序や対応の候補から1つを選びます。

問題はこのような形です

すべての問題は、架空の会社が直面する具体的な状況から始まります。どのチームがどんな機能を作り、データやトラフィックの規模はどれほどで、何が問題なのかが2、3文で示されます。その後に問いが1つ続きます。見落としてはいけない条件は太字です。「リトライによる無駄も減らす必要がある」「モデルは変更しない」といった条件が正解を分けます。

問題の大半は、2つ以上の制約を同時に検討する判断型です。判断型の問題は、条件が1つ変われば正解も変わるように作られています。そのため、「この機能はよい機能か」ではなく、「この条件の下で最も適切な選択は何か」と考える必要があります。誤答選択肢には、現場でよく見かける誤解が1つずつ含まれています。すべてのエラーはリトライすればよいという考え、形式が合えば内容も正しいという思い込み、ストリーミングでコストが下がるという勘違いなどです。本書の「間違えやすいポイント」をよく読んでおけば、初めて見る問題でも、誤った選択肢から順に除外できます。

無料練習セットと模擬審査では、提出後に選択肢ごとの解説と根拠文書を確認できます。正解した問題も解説を読み、判断の根拠が同じだったか確かめてください。昇級審査の問題と解説は公開しません。

6週間の学習計画

1日1時間、週5日を想定しています。実習課題は実際にAPIを呼び出してこそ意味があるため、まず1社のAPIキーと少額のテスト予算を用意してください。

週 範囲 やること
第1週 この教本の使い方、第1章 第1章の実習課題2つ、公式ドキュメントのリクエスト・レスポンス例を使って実際にAPIを呼び出す
第2週 第2章の前半(構造化出力) スキーマ設計と3段階の検証実習、第1章のセルフチェックを復習
第3週 第2章の後半(ツール呼び出し) ツールループの実装、無料練習セットを1回解く
第4週 第3章 レイテンシ測定とキャッシュの損益分岐点の実習、間違えた練習問題を章ごとに分類
第5週 第4章 障害注入の実習、チェックポイントを使うパイプラインの実装
第6週 第5章、全体の復習 評価ハーネスの実習、模擬審査、各章のひと目でわかるまとめと付録Cを復習

要点

時間が足りなければ、各章の「重要な概念」と「間違えやすいポイント」を先に読み、「さらに深く」は2周目に読んでください。出題比率が最も高い第2章は飛ばさないでください。

表記と出典の方針

  • 製品名、API名、パラメータは、max_tokens、Messages APIのように元の表記を使います。
  • ベンダーごとの事実(パラメータ名、上限、料金の倍率、保存期間)は2026年10月20~21日に公式ドキュメントで確認し、根拠ページは各章の末尾と付録Dにまとめました。
  • LLM APIは数週間単位で変わります。原理を先に説明し、ベンダーごとの事実は例として使います。数値を暗記するより、ドキュメントを再確認してください。
  • モデル名と価格は必要な箇所にだけ記し、ドキュメントが示す範囲(例:「Claude Opus 4.6より後に公開されたモデル」)をそのまま用いています。
  • 法令は韓国の国家法令情報センターに掲載された現行の「個人情報保護法」(2026年9月11日施行)を基準としています。本書の法令説明は学習用であり、法律相談ではありません。
  • 事例に登場する会社と人物は、すべて架空です。

参考

Anthropicのドキュメントはplatform.claude.com/docs、OpenAIのドキュメントはdevelopers.openai.com/api/docs、Google Gemini APIのドキュメントはai.google.dev/gemini-api/docsが現在のURLです。