第4章 共有・権限・データの境界

学習目標

  • 人・資料・行動の3軸で権限表を作り、製品ごとの共有ロールによって実際に何が許可されるかを説明する。
  • 会話のリンク、プロジェクト、ノートブック、タスクのリンク、エクスポートしたファイルなど、共有の単位が異なることを理解し、共有範囲を設計する。
  • ワークスペースの管理者設定により、共有と接続を組織単位で制御し、設定変更後に既存の状態を点検する。
  • 保持、削除、学習利用、メモリが異なる設定であることを区別し、プランごとの違いを説明する。
  • 機密資料を送る量を減らす設計とスペースの分離で、データの境界を守る。

はじめに

あるコンサルティングチームが、顧客企業と共同で使うプロジェクトを作りました。チーム長は顧客の担当者に最も低い「閲覧」権限だけを与えたので安全だと考えました。プロジェクトには、顧客と共有する報告書の下書きのほか、内部用の人員単価表も入っていました。1か月後、顧客の担当者が単価表の内容を根拠に、契約条件の再交渉を申し入れてきました。「閲覧」権限であっても、プロジェクト内のファイルを閲覧できてしまったのです。同じチームの別のプロジェクトでは、逆のこともありました。業務用ワークスペースなので学習に使われないと安心していたメンバーが、顧客インタビューの記録をうっかり個人アカウントに貼り付け、整理を頼んだのです。どちらの事故もツールの誤りではなく、境界を正確に理解していなかったことから起きました。

権限の名前は日常語のように見えますが、実際に許可することは製品ごとに定義されています。この章では、その定義を正確に読むところから始めます。続いて、共有単位ごとに何が一緒に渡るか、管理者が組織として何を強制できるか、データがどれくらい保管され、学習に使われるかを扱います。最後に、そもそも送る機密資料を減らす設計と、人が替わるときの権限整理の方法を学びます。第3章がAIは何にアクセスするかを扱ったのに対し、この章は人に何が見えるかを扱います。

重要な概念

権限を3つの軸で読む

「チームメンバーはこのプロジェクトを使える」という権限の説明は、あいまいすぎます。権限は3つの軸の組み合わせです。

軸 質問 例
人 誰が チームメンバー、外注担当者、グループ、リンクを持つ誰でも
資料 何に対して 会話、ファイル、指示、接続、成果物
行動 何ができるか 閲覧、ダウンロード、修正、招待、共有、実行

権限表の1行は、「外注デザイナーはデザイン案フォルダのファイルを閲覧・ダウンロードできるが、指示は修正できず、他の人も招待できない」のように、3軸すべてを含む文である必要があります。そして、その権限が業務に必要な理由を書きます。根拠のない権限は、回収の対象です。

ロール別の共有権限

共有ロールの名前だけで判断すると、間違えやすくなります。確認日時点の公式ヘルプの定義は、次のとおりです。

製品 ロール できること
ChatGPTの共有プロジェクト オーナー 会話の作成、指示の修正、ファイルの追加、メンバーの招待・削除、権限設定、名前の変更、プロジェクトの削除
編集(Edit) 指示の修正、ファイルの追加・削除、新規メンバーの招待。既存メンバーの削除は不可
チャット(Chat) プロジェクトの会話・ファイル・指示を見て会話。招待は不可
Claudeのプロジェクト(Team・Enterprise) Can edit 指示とナレッジの修正、メンバーの追加・削除、メンバー設定の変更
Can view 内容・ナレッジ・指示を見て、プロジェクト内で会話。編集は不可
Gemini Notebook 編集者(Editor) ソースとノートの閲覧・追加・削除、他の人への再共有
閲覧者(Viewer) 共有されたすべてのソース文書とノートを読み取り専用で閲覧

共通して覚えるべき点は、最も低いロールでも資料は見られることです。OpenAIのヘルプは、プロジェクトの全メンバーが追加されたファイルを閲覧・ダウンロードでき、メンバー一覧(名前とメールアドレス)も見られると明記しています。また、編集権限がある人は招待できますが、既存メンバーを退出させることはできません。権限を下げるだけでは資料の露出を防げず、編集権限を与えた時点で共有範囲が広がる可能性があるということです。

共有の単位を区別する

何を共有するかによって、一緒に渡るものが異なります。

共有の単位 受け取る人に見えるもの 注意点
会話1つのリンク 非公開プロジェクトの会話なら、その会話だけ。他の会話・ファイル・指示は見えない(ChatGPT) 共有プロジェクトの会話は、受け取る人がプロジェクトに参加しないと開けない。業務用ワークスペースのリンクには、その後のメッセージも含まれる場合がある
プロジェクト ChatGPTの共有プロジェクトでは、会話、ファイル、指示、メンバー一覧。Claudeはナレッジと指示を共有し、会話は別に共有しない限り非公開 今後登録する資料も全員に見える
ノートブック ソースとノート(閲覧者も閲覧可能) コピーを許可する設定によって、ソースと成果物が複製される場合がある
スケジュールされたタスクのリンク タイトル、指示文、スケジュール 指示文全体が見えるため、機密情報を入れない
エクスポートしたファイル エクスポート時点の内容 Gemini NotebookからDocs・Sheetsへエクスポートしたファイルは、原本と同期せず、共有権限も引き継がれない

共有ボタンを押す前に、「この単位を共有すると、何が一緒に渡るか」を表で確認する習慣をつけてください。会話を1つ見せれば済む仕事で、プロジェクト全体を共有するのが最もよくある失敗です。

グループ共有と権限の計算

1人ずつ招待する代わりにグループやリンクで共有すると管理は楽ですが、権限の計算は複雑になります。ChatGPTのヘルプは、グループを招待した後で個人の権限を別途変えられるものの、グループと個人のうち高いほうの権限が適用されると説明しています。グループを編集権限で招待すると、個人をチャット権限に下げても編集できます。逆に、グループをチャット権限で招待し、一部の個人だけを編集に上げることは可能です。

ワークスペースのリンクから入るメンバーは、既定ではチャット権限で参加し、リンクでワークスペース全員に編集権限を与えることはできません。個人アカウントでオーナーが「Anyone with a link」を選ぶと、リンクを持つログイン済みのユーザーは誰でも参加できます。原則は単純です。広く共有するときは最も低い権限で開き、高い権限は必要な個人にだけ別に与えます。

共有の落とし穴

  1. 画面上で隠すことは、アクセスの遮断ではありません。 Gemini Notebookの「チャット表示」リンクは、ソースと成果物を画面上で隠しますが、公式ヘルプは、閲覧者が元々持つアクセス権を完全に取り消すものではなく、別の経路で隠された資料にアクセスできると警告しています。
  2. 共有をオフにしても、既存の共有が残る場合があります。 Claudeのヘルプによれば、オーナーがプロジェクト共有をオフにすると、新しいユーザー・グループとの共有は止まりますが、既存の個別共有は維持されます。ただし、全社公開プロジェクトは非公開になり、全社公開の設定によってのみアクセスしていたユーザーは利用権限を失います。
  3. リンクを削除しても、すでに作られたコピーは消えません。 ChatGPTで共有タスクリンクを削除すると、他の人は新しく開けなくなりますが、受け手がすでに作ったコピーは残ります。
  4. 接続された内容は共有が制限される場合があります。 Claude Team・Enterpriseのヘルプは、コネクタは共有プロジェクトではなく非公開プロジェクトで使うよう案内しています。会話を特定の人と共有する際も、コネクタやMCPツールの元データは除かれ、Claudeの最終回答だけが渡ります。最終回答にも接続先の内容が含まれ得るため、共有前に内容を確認する必要があります。また、元データをコピーして貼り付けることで制限を迂回してはいけません。
  5. 指示は共有の制御ではありません。 「この資料は外部に話すな」という指示は、モデルの回答を導くだけで、アクセス権は変えられません。

共有範囲の設計手順

共有範囲は、権限の名前を調整するのではなく、スペースを分けることで設計します。

  1. 共有する人を集団に分けます。例:内部チーム、外部パートナー、全従業員。
  2. 集団ごとに、見るべき資料と見てはいけない資料を書きます。
  3. 「見てはいけない資料」がある集団には、その資料のない別のスペースを作ります。
  4. 各スペースは最も低いロールを基本とし、編集権限は管理責任者だけに与えます。
  5. 共有の終了日を決め、その期日にメンバーとリンクを整理する作業をスケジュールに登録します。
  6. 共有前に、その集団のロールでテストします(さらに深くを参照)。

ワークスペースの管理者による制御

組織単位の制御は、個人の注意より強力です。個人の注意は人によって異なり、ミスも起こりますが、管理者による制御は組織全体に同じルールを強制します。確認日時点の主要な制御は次のとおりです。

領域 ChatGPT(Business・Enterprise) Claude(Team・Enterprise)
共有 ロールベースアクセス制御で、プロジェクトを作成・共有できる人を指定。Enterpriseでは共有自体を無効にできる オーナーがプロジェクト共有を無効にする。Enterpriseではロール別に無効化
接続 ワークスペースで使うアプリを有効・無効にする。Enterpriseでは、会社ドメインのアカウントが未承認のワークスペースで接続しないよう制限 オーナーがコネクタを組織に追加し、ツールごとの動作を制限。Enterpriseでは認証済みドメインのサービスの外部接続をブロック
エージェント・ブラウザ ロール別にWorkの使用を管理し、ブラウザの使用などは別途制御 Claude in Chromeの許可リスト・ブロックリスト、拡張機能全体の有効・無効
データ 管理者が保持期間を制御。Businessの管理者にメンバーの非公開会話の閲覧権限が自動で生じるわけではなく、オーナーは利用可能なオプションがある場合にメンバーデータをエクスポートできる(文書により説明範囲が違うため要確認) Enterpriseのオーナーが独自の保持期間を設定。フィードバック送信(Rate chats)の無効化
記録 EnterpriseのコンプライアンスAPIで会話・GPTの監査ログへアクセス 保持関連の変更を監査ログに記録

管理者による制御にも限界はあります。管理者は機能を有効・無効にし、範囲を決められますが、メンバーが登録する個々の資料が適切かまで判断してくれるわけではありません。管理者による制御と、メンバーによる資料の判断は、両方が必要です。

保持、削除、学習利用、メモリ

データの扱いには、異なる4つのスイッチがあります。1つを変えても、残りが連動して変わるわけではありません。

スイッチ 制御すること よくある誤解
保持期間 サービスに会話とファイルが残る期間 学習をオフにすると保持期間も短くなる
削除 ユーザーが特定の会話・ファイルを消す行動 消せば直ちにすべてのシステムからなくなる
学習利用 内容がモデル改善に使われるか 学習をオフにすると過去の会話が消える
メモリ 後の会話が過去の情報を参照するか メモリをオフにするとサービスにも保存されない

OpenAIのヘルプは、「Improve the model for everyone」をオフにすると以後の会話が学習に使われなくなるものの、保存済みの会話を削除したり隠したりはしないと説明しています。一時チャットは履歴に残らず、メモリを作らず、学習にも使われませんが、安全のため最大30日間保管される場合があります。Anthropicは、個人向けプランで会話を削除すると履歴からはすぐに消え、バックエンドの保管先からは30日以内に削除されると明記しています。削除にも時間がかかるということです。

プラン別のデータの扱い

業務用プランと個人用プランでは、既定値が異なります。

区分 学習利用の既定値 保持 注意する例外
ChatGPT Business・Enterprise・Edu 使用しない 管理者が制御。削除した会話は、法的要請がなければ30日以内に除去 フィードバックなど、ユーザーが明示的に共有に同意したデータは学習に使われる場合がある
ChatGPTの個人向け 「モデル改善」の設定による ユーザーが削除 個人アカウントの共有プロジェクトは、オーナーとすべての貢献者が設定を有効にした場合にのみ、学習に使われる可能性がある
Claudeの業務用(Team・Enterprise・API) 使用しない Enterpriseは独自の保持期間(最短30日)を設定可能 高評価・低評価のフィードバックを送ると、その会話が学習に使われることがあり、最大5年間保管される
Google WorkspaceのGemini 許可なくドメイン外の学習に使わない 製品ごとに異なる。Geminiアプリは管理者が設定した期間、Gemini Notebookの質問・回答はセッション終了後に保管しない Gemini NotebookはWorkspaceアカウントなら、フィードバックを送っても人による確認や学習に使わない

同じ「フィードバックボタン」でも、プランにより結果が異なります。業務用プランでもフィードバックは例外になり得るので、組織は許可するかを決め、メンバーに知らせる必要があります。Claude Enterpriseの独自の保持期間では、プロジェクト内の会話にはプロジェクトの保持期間が優先し、プロジェクトは別途設定しなければ無期限で保管されることも確認が必要です。

機密資料の分離:送る量を減らす設計

機密資料を全部登録してから、結果で隠す方法では手遅れです。最初から送る量を減らすことが原則です。

  1. 処理する環境:機密資料は、会社が契約した業務用ワークスペースでのみ扱います。
  2. 必要な部分だけを抜き出す:顧客の問い合わせ分析に必要なのが問い合わせ内容なら、名前と連絡先は除きます。
  3. 仮名処理:韓国の個人情報保護法は、仮名処理を、個人情報の一部を削除したり、一部または全部を置き換えたりして、追加の情報なしでは特定の個人を識別できないように処理することと定義しています(第2条第1号の2)。たとえば顧客名を「顧客A」に置き換え、対応表はAIのスペースの外に別途置きます。
  4. 集計した資料を使う:個人別の記録ではなく、月別・種類別の件数など、集計値を使います。
  5. スペースの分離:アクセスが必要な人だけがいる別のスペースを作ります。
  6. 定期的な点検:四半期ごとにメンバー、公開範囲、接続済みアプリを点検し、終わった仕事のアクセスを回収します。

隠した情報も、文脈から推定できる場合があることを忘れないでください。小規模な部署の退職理由の記録は、名前を消しても誰かわかることがあります。こうした資料では仮名処理だけでは不十分なので、AIに入れない選択を先に検討します。

派生情報と個人・組織のスペース

元のファイルを共有しなくても、情報は漏れることがあります。AIの作った要約、比較表、引用文は、原本の内容を含む派生情報です。内部スペースで作った要約を外部スペースに貼り付けると、原本を共有したのと同じ効果になります。複数の資料を組み合わせた結果が、各資料だけでは見えなかった情報を明らかにすることもあります。

リスク 対応
内部用の要約を外部スペースに貼り付ける 配布用の成果物は、配布用の資料だけがあるスペースで作る
複数の資料の組み合わせで機密情報が明らかになる 受け手の業務上の必要性を基準に、組み合わせる資料を選ぶ
同じ人が個人アカウントと会社アカウントを使う 作業前に画面のアカウントとワークスペース名を確認する

個人スペースと組織スペースは、同じ人が使っても管理主体とポリシーが異なります。会社の資料を個人アカウントのスペースに登録すると、会社の保持・学習・監査設定は適用されません。誤って登録したらすぐに削除し、会社のポリシーに従ってセキュリティ担当者に知らせます。

入社・異動・退職とアクセスの整理

人が替わると、その人に紐づくAI資産が運用の盲点になります。点検する資産は4つです。

資産 確認すること
共有スペース その人がオーナーのプロジェクト・ノートブック、メンバーとして参加するスペース
アシスタント その人が作ったアシスタントと、指示の原文の保管場所
接続 その人のアカウントで認証したコネクタ
スケジュールされたタスク その人のアカウントで動く定期タスク

スケジュールされたタスクは、特に別途確認する必要があります。ChatGPTのタスクは、作成者のアカウントで、その人の接続と権限を使って動き、共有リンクで渡したコピーも、受け手のアカウントで別に実行されます。担当者が離れると、タスクが気づかれないまま止まったり、逆に離れた人の権限で動き続けたりすることがあります。会社共用のアシスタントと定期タスクは、個人ではなくチームの責任者を基準に作り、共同管理者を置くとよいでしょう。組織がIDプロバイダーでアカウントを管理していれば、退職処理と接続の回収を連動できます。たとえば、Claudeの管理型認証コネクタは、IDプロバイダーでアカウントを解除するとコネクタへのアクセスも回収されます。

さらに深く

設定変更は多くの場合、変更後の処理にのみ適用される

管理者が設定を変えると、すでに開かれている共有や接続も自動的に回収されそうですが、多くの設定は以後の動作だけを変えます。

設定変更 変わらないもの
Claudeでプロジェクト共有をオフにする 既存の個別・グループ共有(全社公開プロジェクトは非公開になる)
ChatGPT Enterpriseのドメイン接続制限 すでにあるアプリの接続
共有プロジェクトのメンバー全員を削除する ワークスペースのリンクで共有していれば、リンク設定を変えるまでは新しいユーザーが参加できる
スケジュールされたタスクに関する会話を削除する タスクは停止するが、共有リンクは残る

そのため、設定変更後は必ず既存の状態の点検が必要です。逆に、取り消せない方向に即座に作用する設定もあります。Claude Enterpriseで保持期間を短くすると、新しい期間を超えるデータは、設定を保存した時点で永久削除が予定され、復元できません。設定ごとに「以後のみ」か「即時・遡及」かを確認し、遡及する設定は影響範囲を先に確認してから変更します。

権限が実際に適用されたかをテストする

管理画面の設定値と、ユーザー側の実際のアクセス権限は異なる場合があります。グループと個人の権限が重なる、元のシステムの権限が想定と違う、古いリンクが残る、といった原因があるためです。重要な共有はテストします。

  1. ロールごとに、テストアカウントか協力してくれる同僚を決めます。
  2. そのロールで、許可された資料にアクセスできるか確認します。
  3. 禁止された資料を開く、指示を修正する、他の人を招待する、ファイルをダウンロードすることを試します。
  4. AIに禁止された資料の内容を尋ねます。その資料がスペースにないなら、答えられないはずです。
  5. 結果と設定の根拠を表に残し、次の点検日を書きます。

個人情報の視点で見る業務自動化

韓国の個人情報保護委員会は、2025年8月に「生成AIの開発・活用のための個人情報取扱ガイド」を公開しました。ガイドは、ChatGPTなどの商用サービスを活用する場合も含め、生成AIの開発・活用のライフサイクルを、目的設定、戦略策定、学習と開発、適用と管理の4段階に分けています。各段階で確認する安全措置を示し、個人情報保護責任者(CPO)を中心にしたガバナンスを重視しています。委員会はガイドを継続的に更新する予定としているため、最新版の確認が必要です。

ノーコード自動化の担当者にとって、この視点は3つの問いにまとめられます。この自動化は個人情報を扱うか。扱うなら、目的に必要な最小限か。処理する環境と保持・学習の設定を、会社の個人情報担当者が把握しているか。本書は法律上の助言を行いません。個人情報が入る自動化は、設計段階で会社の個人情報担当者と一緒に検討してください。

実務の場面

ソリウル音響:外部の企画会社と共同で使うスペース

公演用音響機材のレンタル会社「ソリウル音響」は、公演企画会社「月の輪企画」と2か月間の地方巡回公演を共同で準備しています。プロジェクトマネージャーのカンさんは、会社の業務用ワークスペースに共有プロジェクトを作り、企画会社の担当者2人と使おうとしています。入れる資料は、公演会場別の機材配置図、搬入予定表、そして内部用の機材原価とレンタル見積もりの算定表です。

カンさんの最初の案は、1つのプロジェクトにすべてを入れ、企画会社の担当者には最も低い権限を与えるものでした。ヘルプを確認すると、最も低い権限でもファイルを閲覧・ダウンロードできました。2つ目の案は、原価資料を入れたうえで、指示に「原価と利益率は話すな」と書くものでした。これも退けました。指示はアクセスを止められず、ファイルは引き続き開けるからです。

結局、スペースを2つに分けました。企画会社と共有する「巡回公演の協業」プロジェクトには配置図と予定表だけを登録し、原価と見積もり算定表は、会社の従業員だけの「巡回公演の内部用」プロジェクトに置きました。企画会社の担当者にはチャット権限を与え、ソリウル音響の技術監督にだけ編集権限を与えました。

本当の問題は、その後に明らかになりました。3週目に技術監督が、内部プロジェクトでAIに会場別の機材構成の要約を頼み、その要約を協業プロジェクトに貼り付けようとしました。要約表の一番下には、会場ごとの予想利益率が1行入っていました。内部プロジェクトの資料に基づいてAIが作った派生情報でした。幸い、カンさんは貼り付け前に見つけました。

カンさんはルールをもう1つ作りました。外部と共有する成果物は、外部共有用のプロジェクト内でのみ作ることです。内部プロジェクトで作った成果物を外へ移す必要があるときは、人が1行ずつ確認します。共有前には、同僚1人がチャット権限のアカウントで協業プロジェクトに入り、「機材原価はいくらか」「利益率は何パーセントか」と質問するテストもしました。協業プロジェクトにはその資料がなかったため、AIは答えられませんでした。公演終了日に企画会社の担当者をメンバーから除外する作業が、カンさんのカレンダーに登録されました。

イウム生活:部署異動者の自動化の引き継ぎ

生活用品会社「イウム生活」の運営チームのペク主任は、来月、商品企画チームへ異動します。ペク主任はこの1年、チームのAI自動化を1人で作ってきました。チョンチーム長は、異動前の2週間で引き継ぎを終えるよう伝えました。

ペク主任とチョンチーム長は、まず資産一覧を作りました。ペク主任がオーナーの共有プロジェクト3つ、顧客支援の相談員30人が使う返品案内アシスタント1つ、ペク主任の個人アカウントで認証したメール・ドライブのコネクタ、そしてペク主任のアカウントで毎朝動くスケジュールされたタスク2つです。タスクの1つは、前日の返品受付メールを要約し、チームのチャンネルに投稿するものでした。

チョンチーム長は最初、ペク主任のアカウントをそのまま残し、パスワードだけを受け取ろうとしました。ペク主任は反対しました。他人のアカウントで仕事をすると、誰が何をしたかの記録が混ざり、ペク主任は新しい部署でも同じアカウントを使い続けるからです。2人は、アカウントではなく資産を移すことにしました。

  1. 返品案内アシスタントの指示原文とテスト質問セットをチームドライブへ移し、製品が所有権の移転に対応するか確認しました。非対応の項目は、運営チームの後任担当者のアカウントで作り直し、同じテストセットで結果を比較しました。
  2. 共有プロジェクトは、後任担当者を先に編集者として招待し、所有関係を整理しました。使わなくなったプロジェクト1つは、必要な資料だけをチームドライブに移して削除しました。
  3. スケジュールされたタスクは後任担当者のアカウントで新しく作り、後任が自分のアカウントでメール・ドライブを接続し直しました。新しいタスクが3日連続で正常な結果を出したことを確認してから、ペク主任のアカウントのタスクを削除しました。
  4. ペク主任が運営チームのスペースのメンバーから外れたか、個人のコネクタが運営チームの資料にもうアクセスできないかを確認しました。

引き継ぎ最終日、チョンチーム長はチームのルールを変えました。今後、チームで使うアシスタントと定期タスクは必ず2人以上で管理できるように作り、資産一覧は四半期ごとに更新します。

間違えやすいポイント

  1. 「チャット・閲覧権限なら資料は見えない」 最も低いロールでも、通常は資料を閲覧できます。見せてはいけない資料はスペースから外します。
  2. 「画面で隠せば安全だ」 画面上の非表示と、アクセスの回収は異なります。
  3. 「共有をオフにすれば、既存の共有もなくなる」 新しい共有だけが止まり、既存の個別共有は残る場合があります。逆に、公開範囲を通じたアクセスはすぐに閉じることもあります。設定変更後は、現状を点検します。
  4. 「グループを招待した後、個人の権限を下げれば、その人は低い権限になる」 グループと個人のうち、高い権限が適用される場合があります。
  5. 「学習利用をオフにすると、会話も消える」 学習利用と保持・削除は別の設定です。
  6. 「業務用プランなら、どんな場合も学習に使われない」 フィードバックなど、明示的に共有したデータは例外になり得ます。
  7. 「元のファイルを共有していないので、情報は漏れていない」 要約・比較表などの派生情報でも漏れます。
  8. 「担当者のアカウントを引き継げば終わりだ」 アカウントではなく資産(スペース、アシスタント、接続、スケジュールされたタスク)を移し、結果を確認する必要があります。

ひと目でわかるまとめ

テーマ 覚えておくこと
権限表 人・資料・行動の3軸。根拠のない権限は回収
最も低いロール 資料は見られる(ChatGPTのチャット、ClaudeのCan view、Notebookの閲覧者)
編集権限 招待できる。ChatGPTの編集者は既存メンバーを削除できない
共有の単位 会話のリンク ≠ プロジェクト。タスクリンクは指示文が公開され、エクスポートしたファイルは原本とは別のコピー
グループ共有 グループと個人のうち、高い権限が適用される場合がある。広く開くときは低い権限で
管理者による制御 共有・接続・ブラウザ・データ・記録を組織単位で強制
設定変更 多くは以後にだけ作用。変更後に既存の状態を点検し、遡及的な削除は慎重に行う
4つのスイッチ 保持・削除・学習利用・メモリはそれぞれ異なる
プラン 業務用は既定で学習に使わないが、フィードバックは例外になり得る
送る量を減らす 抜粋、仮名処理(対応表は外に置く)、集計、スペース分離
派生情報 配布用の成果物は配布用のスペースで作る
人が替わるとき スペース・アシスタント・接続・スケジュールされたタスクを移し、確認する

公式ドキュメントで確認する

セルフチェック

4-1. 「チームメンバーはこのスペースを使える」という権限の説明があいまいな理由を、人・資料・行動の3軸で説明し、3軸すべてを含む1文に書き換えてください。

4-2. ChatGPTの共有プロジェクトの3つのロール(オーナー、編集、チャット)が、「他の人を招待する」「既存メンバーを退出させる」「登録されたファイルをダウンロードする」を行えるか、表にまとめてください。

4-3. 5つの共有単位(会話のリンク、プロジェクト、ノートブック、スケジュールされたタスクのリンク、エクスポートしたファイル)から1つ選び、共有時に一緒に渡るものと、渡らないものを書いてください。

4-4. 保持期間、削除、学習利用、メモリの4つがそれぞれ何を制御するかを1行ずつ書き、「学習利用をオフにしたので、過去の会話も消えた」という考えが誤りである理由を説明してください。

4-5. 韓国の個人情報保護法の仮名処理の定義を、自分の言葉で説明してください。また、相談記録をAIで分析する前に行える「送る量を減らす」措置を2つ示してください。

4-6. 元のファイルを共有していなくても情報が漏れる経路を、「派生情報」という言葉を使って説明し、防止する運用ルールを1つ提案してください。

4-7. 管理者設定の変更後に既存の状態を点検すべき理由を説明してください。以後にだけ作用する設定と、即座に取り消せない形で作用する設定の例を、1つずつ挙げてください。

実習課題

実習

共有状況の点検表(40分)

  1. 自分が作った、または参加している共有プロジェクト・ノートブック・アシスタント・タスクのリンクをすべて書く。
  2. 各項目のメンバー(グループを含む)、ロール、外部の人の有無、機密資料の有無、共有終了予定日を表に書く。
  3. 「外部の人あり」と「機密資料あり」が両方付いたスペースと、終了日を過ぎたスペースを探す。
  4. 該当するスペースがあれば、資料の分離かメンバーの整理を1つ実行し、実行後に実際のアクセスを確認し直す。

完了基準: すべての項目のロールと資料の性質が表にあり、危険な組み合わせがあれば実行した措置とその後の確認結果が、なければ次の点検日が書かれていれば完了とする。

実習

機密資料の分離案とロールのテスト(50分)

  1. チームがAIで扱いたい資料から、個人情報や内部機密が混ざったものを1つ選ぶ。実際の資料の代わりに、同じ形式の架空の資料を使ってもよい。
  2. この業務に本当に必要な欄だけを残す抜粋案、仮名処理案(対応表の保管場所を含む)、集計案から適切なものを選ぶ。
  3. 共有対象の集団ごとにスペースを分ける設計を、権限表(人・資料・行動)として書く。
  4. 同僚1人に最も低いロールで参加してもらい、禁止された資料の内容をAIに尋ねてもらって、結果を記録する。

完了基準: 送る量を減らす措置と理由、集団ごとの権限表、ロールのテスト結果(質問とAIの応答の要旨)がすべて残っていれば完了とする。