付録B セルフチェックの解答と解説
第1章
1-1. 学習利用、保持、人によるレビュー、所在地(保存・処理)、契約上の地位(DPA・処理者かどうか)です。学習利用と特に混同されやすいのは、保持と人によるレビューです。「学習に使わない」という約束は、保管期間や不正利用監視のための人によるレビューについては何も示していません。
1-2. 利用規約は契約当事者とサービスの範囲・責任を定め、利用ポリシーは許される用途と禁止事項・追加要件を定めます。DPAは、ベンダーが顧客の指示に従って顧客データを処理する際の条件(目的の制限、セキュリティ、サブプロセッサー、返却・削除)を定めます。
1-3. ゼロデータ保持はすべての機能に及ぶわけではありません。OpenAIの文書は、Conversations、ファイル、ベクトルストアなど、サーバーに保存しなければ動作しない機能を対象外とし、これらのオブジェクトは削除するまで残ると説明しています。承認を受けた組織でも、これらの機能にアップロードした資料の削除手続きを別途管理する必要があります。
1-4. OpenAI APIの地域表では、韓国は保存だけに対応し、地域内の処理には対応していません。そのため推論は国外で行われ、地域外で一時保存される可能性もあります。個人情報を含むなら国外処理委託なので、まず移転の根拠を定めます。情報主体との契約履行に必要な委託なら法定事項をプライバシーポリシーで公開するか個別に通知し、それ以外なら別途同意など他の根拠が必要です。米国外の地域を使うには、Zero Data RetentionまたはModified Abuse Monitoringの承認も必要です。
1-5. Microsoft Copilotのプロンプト・応答にはDPAが適用され、Microsoftは処理者ですが、Web検索のためにBingへ送る生成クエリにはDPAが適用されず、Microsoftは管理者です。規程ではWeb検索を別の行として扱い、契約上DPAの範囲外での処理が許されないデータを扱うユーザーには、管理ポリシーでWeb検索を無効にする措置を求める必要があります。
1-6. 現行施行版と改訂版の施行日、2つの版で変わった要件(高リスク領域の一覧、開示方法など)、確認日を併せて記録します。施行前には、①変更要件が社内の承認用途に影響するかを承認一覧と照合し、②影響を受ける承認条件と従業員向け案内を修正する担当者・日程を決めます。ベンダーのポリシーが緩和されても、社内規程を維持するかどうかは別に判断します。
1-7. 解答例:学習のデフォルト、学習の例外、デフォルトの保持、管理者による保持設定、ゼロデータ保持、保存・処理場所、DPA、利用ポリシーの版です。各セルにリンク、根拠となる文、確認日を記します。「未確認」のセルはベンダーへの質問一覧に移して回答期限を決め、回答まではそのセルの条件に依存するデータの入力を許可しません。
第2章
2-1. 施行日は2026年1月22日、制定法律は法律第20676号(2025年1月21日公布)です。2026年1月20日の改正法(法律第21311号)は1月22日から施行しますが、AI脆弱層に関する条項(第3条第5項、第35条第1項後段など)は公布後6か月を経過した日から施行するため、現行法律の施行日は2026年7月21日と表示されます。
2-2. 法律と施行令には拘束力があり、告示には法令の委任の範囲内で拘束力があります。ガイドラインは案内資料で、拘束力はありません。確認日現在、状況が不確かな階層は告示です。国家法令情報センターの委任条文に関連する告示が見当たらないため、確定したかどうかを直接確認する必要があります。
2-3. この会社は外部モデルでサービスを提供する利用事業者です。生成AIサービスなので、第31条第1項の事前告知(規約、画面など)と第2項の出力表示(人が認識できる方法、または機械可読の方法。後者なら案内文を1回以上提供)が適用されます。出力が文章なら、現実と区別しにくい音声・画像・映像の第3項は通常該当しません。高影響かどうかは別途、事前に検討します。
2-4. 人の生命・身体の安全・基本権に重大な影響を及ぼす、または危険をもたらすおそれがあることと、第2条第4号の各目に挙げられた領域で活用されることの2つです。法定領域で使われる場合でも、その結果が人の権利や安全に重大な影響を与えるおそれのない補助的な用途であれば、高影響には当たらない可能性があります。
2-5. 初回の回答(要請日から30日、1回に限り30日の延長可)に異議がある場合、受領日から10日以内に再確認要請書へ従来の回答結果などを添えて提出します。長官は専門委員会への諮問を経て、再確認要請日から30日以内に回答します(施行令第25条第3〜5項)。
2-6. リスク管理方策の主要内容、説明方策の主要内容、利用者保護方策、管理・監督者の氏名と連絡先を掲示し、履行根拠を文書で5年間保管します。営業秘密に該当する事項は掲示対象から除外できますが、それを理由に掲示全体を行わなかったり、文書保管を省略したりすることはできません。
2-7. 違反の発見または通報・苦情→第40条第1・2項による資料提出要求・調査→違反が認定されれば第40条第3項の中止・是正命令→命令の不履行で第43条第1項第3号の過料、という流れです。別表2の金額は、1回目1,000万ウォン、2回目2,000万ウォン、3回目以降3,000万ウォンです。表示義務の違反自体は過料の対象ではありません。政府は、指導期間の方針が運用される間、事実調査を極めて例外的な場合に限るとしています。
2-8. 正解は1つではありません。よい解答は、各機能の9段階の結論と条文根拠を記し、法定領域に該当しうる機能には事前検討の記録と確認要請の判断を残します。また、未決の項目を法務レビュー・確認要請・告示待ちに分けています。
第3章
3-1. 匿名や仮名で処理しても目的を達成できるなら匿名を使い、匿名で達成できなければ仮名を使う必要があります。加工前の元データを使うには、匿名・仮名では学習目的を達成できないという説明、つまりどの情報がなぜ必要かを先に示す必要があります。
3-2. 当初の収集目的との関連性、収集の経緯や処理慣行から見た予測可能性、情報主体の利益を不当に侵害するか、仮名処理・暗号化などの安全性確保措置を行ったか、の4点です。追加的利用が継続する場合、判断基準をプライバシーポリシーで公開し、CPOがその基準どおりに利用されているかを点検する必要があります。
3-3. AI開発目的の正当性、公開個人情報処理の必要性、具体的な利益衡量です。案内書は法令ではなく委員会の解釈と勧告なので、拘束力ある基準ではありません。判断メモでは「案内書を参考にした判断」と、その性格を明記する必要があります。
3-4. 遺伝子検査などで得た遺伝情報、犯罪経歴資料、人種・民族情報、そして身体的・生理的・行動的特徴に関する情報のうち、特定個人を識別する目的で一定の技術的手段により生成した情報です。特徴情報は、識別目的と技術的生成という2条件を満たす場合にセンシティブ情報になります。
3-5. 委託は委託者の業務を代わりに処理する関係で、受託者は委託範囲を超えて利用できません(第26条第5項)。ベンダーが自己のモデル改善に使えば委託範囲を超え、実質的には受領者の目的のための処理(第三者提供に類似)となるため、同意や他の根拠が必要になります。そのため学習不使用の約束とDPAを確認します。
3-6. 決定の結果、使われた主要な個人情報の類型、その類型が決定に与えた影響などの主要基準、主要な個人情報の処理過程などの決定手続きを含む、簡潔で意味のある説明です。要求を受けた日から30日以内に書面などで行います。正当な理由がある場合は通知したうえで、2回に限り各30日の延長ができます(施行令第44条の3)。ただし権利・義務に重大な影響のない決定なら、公開事項のうち、主要な個人情報類型と決定との関係、考慮事項と処理手続きを知らせることで代替できます。
3-7. 解答例:収集(契約履行、利用期間)、検索インデックス(同じ目的、原本と同期間、権限フィルター)、外部モデル呼び出し(処理委託。海外リージョンなら国外移転根拠を確認後、法定事項の公開または同意)、会話ログ(品質管理、定めた期間)、廃棄(原本・インデックス・ログを同時廃棄し、他法令の保管対象は分離保管)です。根拠条文とセンシティブ情報が混じる箇所が示されていれば、よい解答です。
第4章
4-1. 業務と責任者、ツール・プラン・契約主体・経路、入力データの等級、接続システムと外部行動、法的検討結果、状態と再検討日から5つ以上です。最も見落としやすいのは、すでに利用しているSaaSに更新で追加されたAI機能です。
4-2. 解答例:ポリシーは「顧客の個人情報は承認済みツールだけで処理する」、標準は「承認ツールは学習不使用、所定の保持期間、フィードバック無効化を備える」です。手順は「新しいツールは申請書の提出後、情報セキュリティの検討を経て所定の期間内に承認可否を通知する」、案内は「顧客の名前と連絡先を消してから貼り付けてください」です。
4-3. 出力が人のレビューなしでそのまま顧客に届く場合、そして採用・評価など人に関する判断に使われたり、AIが送信・決済など取り消しにくい行動を直接行ったりする場合です。データ等級が同じでも、用途の影響と実行権限が大きくなれば区分を上げます。
4-4. 申請者、目的、データ等級、期間(期限)、代替策の検討結果、補完統制、承認者、期限時の回収方法です。同じ例外が繰り返されるなら、規程や承認ツール一覧が現実に合っていない兆候と捉え、規程の改訂やツールの追加を検討します。
4-5. 管理画面で意図どおり保存しても、実際の適用は異なる可能性があります。例えばGeminiアプリでは、構成グループの設定が組織部門に優先するので、組織部門の変更がグループ所属ユーザーには適用されない場合があり、反映にも時間がかかります。一般ユーザーのアカウントで確認して初めて、規程が実際に実装されたといえます。
4-6. 外部送信、決済・返金、削除、権限変更など、取り消しにくい、または外部に影響する行動です。プロンプトの指示文はインジェクションやモデルの誤りで無視されうるため、金額・件数・対象の上限をモデルとは独立したシステムが強制して初めて、実際の統制になります。
4-7. 正解は1つではありません。よい解答は許可・条件付き・禁止をすべて含み、条件付きセルごとに実装手段(保持設定、フィードバック無効化、組織部門制限、Web検索ポリシーなど)か、「人の行動に依存」を示しています。
第5章
5-1. 解答例:「規約案内チャットボットが存在しない補償条項を自信を持って案内し、それを信じた顧客が請求機会を失い、一部しか回復できない」。影響を受ける人、条件、被害、回復可能性が分かる必要があります。
5-2. 妥当性と信頼性、安全性、セキュリティとレジリエンス、説明責任と透明性、説明可能性と解釈可能性、プライバシーの強化、有害なバイアスが管理された公平性です。必要条件とされるのは「妥当性と信頼性」、他のすべての特性に関係するのは「説明責任と透明性」です。
5-3. 例はConfabulation、Data Privacy、Harmful Bias or Homogenization、Human-AI Configuration、Information Integrityです。ほかにCBRN Information or Capabilities、Dangerous, Violent, or Hateful Content、Environmental Impacts、Information Security、Intellectual Property、Obscene, Degrading, and/or Abusive Content、Value Chain and Component Integrationがあります。事例ごとに12区分をチェックリストとして確認し、該当区分ごとに具体的な被害シナリオを書いて、リスクの漏れを防ぎます。
5-4. 緩和、移転、回避、受容です。移転は費用や責任の一部を他の主体に移すだけで、影響を受ける人の被害自体は減らしません。そのため、人への影響が大きいリスクでは緩和や回避も併せて検討する必要があります。
5-5. 人工知能基本法施行令第27条第2項による、高影響の責務の履行根拠文書の5年間保管と、個人情報保護法第28条の4第3項による仮名情報の処理記録の作成・保管(廃棄した日から3年以上)です。
5-6. ISO/IEC 42001が証明するのは、組織にAIマネジメントシステムが構築・運用されている事実と、独立認証機関の審査に合格した事実(認証範囲内)です。証明しないのは、特定製品の正確性・公平性と、導入組織のユースケースのリスクや法令遵守の状況です。
5-7. 正解は1つではありません。よい解答は、各行でシナリオと統制が結び付き、法令・契約要件を裁量的統制と区別し、高等級ほど受容権者が上位となり、未測定の部分を不確実性欄に記しています。