この教本の使い方

注意

法的助言ではありません。 本書はAIDANの特技課程に備えるための学習教材です。法令とベンダー規約を理解するために要約・解説したもので、特定のサービスや事案についての法的意見ではありません。どのサービスが義務の対象になるか、どの処理根拠を使えるかは、事実関係によって結論が変わります。実際に判断する前には、判断を行う時点で施行されている法令の原文を確認し、弁護士などの専門家のレビューを受けてください。

確認日:2026年10月20日(レビュー反映箇所は10月21日に再確認)。本書の法令の内容は、国家法令情報センターで原文を読み、整理しました。

  • 「人工知能の発展と信頼基盤の造成等に関する基本法」(略称:人工知能基本法)[施行 2026年7月21日][法律第21311号、2026年1月20日、一部改正]
  • 同法施行令[施行 2026年8月20日][大統領令第36580号、2026年8月18日、他法改正]
  • 韓国の「個人情報保護法」(PIPA)[施行 2026年9月11日][法律第21445号、2026年3月10日、一部改正]
  • 「個人情報保護法施行令」[施行 2026年9月11日][大統領令第36671号、2026年9月10日、一部改正]

ベンダーの規約・ポリシーとNIST・ISOの資料も、同日に各機関の公式ページで確認しました。確認日現在、まだ確定していない事項や、今後変わる事項があります。人工知能基本法が長官告示(科学技術情報通信部長官の告示)に委ねた詳細基準(累積演算量の算定方法など)は、国家法令情報センターに関連する告示が見当たらず、政府が示した指導期間も「最低1年以上」とのみ発表され、終了日は決まっていません。Anthropicの利用ポリシーは2026年11月12日施行の改訂版がすでに公開されており、NISTはAI RMF 1.0の改訂作業中であると明らかにしています。本文では、該当する項目ごとにその状況を記しています。

本書の対象読者

本書は2種類の読者に向けて書いています。一方は会社のAI導入ポリシーを策定する法務・コンプライアンス・情報セキュリティ担当者、もう一方はAIサービスを企画・運営する責任者です。前者は「このツールを使ってよいか」、後者は「自社のサービスが何を守るべきか」を問います。どちらの問いも、結局は3つの仕事に行き着きます。ベンダーの条件と法令を正確に読むこと、それを組織の規程と設定に落とし込むこと、そして後からその判断を説明できるように記録することです。

白帯(AIリテラシー)レベルの理解があり、個人情報やコンプライアンスに関わる業務を少しでも経験したことがあれば、十分に学習できます。条文を初めて読む方でも内容を理解して読み進められるよう、用語が初めて登場する際には、その意味を説明しています。

本書を終えたときには、プラン別データ条件比較表、機能別の人工知能基本法の義務判断表、個人情報の処理根拠検討メモ、1枚のAI利用規程、リスク登録簿を自分で作れることを目指します。各章の実習課題で、これらの成果物を1つずつ作ります。

本課程は個別の事案についての法的助言に代わるものではありません。また、海外法令は試験範囲外のため扱いません。

本書の構成

本文は試験の領域と同じ順番の5章です。第1章はベンダーが定める条件、第2章と第3章は国が定める規則、第4章と第5章は組織が自ら構築する仕組みを扱います。前の章で読み取った条件が、後の章で規程を策定し、統制を構築するための材料になるように構成しています。

各章は、学習目標、はじめに、重要な概念、さらに深く(トレードオフと境界事例)、実務の場面(採用しなかった選択肢も示す架空の事例)、間違えやすいポイント、ひと目でわかるまとめ、公式ドキュメントで確認する、セルフチェック(解説は付録B)、実習課題の10節で構成しています。

付録には用語集(A)、セルフチェックの解説(B)、試験当日のガイド(C)、本書で引用した公式文書の一覧(D)があります。初めて読むときは章の順に、復習するときは各章の「ひと目でわかるまとめ」と「間違えやすいポイント」から読むことを勧めます。

試験の概要

AIガバナンス・AI基本法(AGV)は特技課程です。特技審査は35問を60分以内に解き、素点75点以上で合格です。無料の練習セットは10問・25分です。

章 領域 配点比率
第1章 ベンダーポリシーとデータ条件 20%
第2章 韓国AI基本法 25%
第3章 個人情報とAI 20%
第4章 組織のポリシーと統制 20%
第5章 リスク評価と説明責任 15%

法令の問題は試験時点で施行されている法令を基準とし、基準日によって結論が変わる問題には基準日を明記します。ベンダーの問題は公式文書の現在の内容を基準とします。

問題はこのような形です

問題には5つの形式があります。多くは架空の組織の状況を提示し、その状況で最も適切な判断や措置を問います。

形式 出題の形 採点 解き方のコツ
単一選択 4〜5個の選択肢から正解を1つ 完全一致 状況の条件(誰が、どのプランで、どのデータを、いつ)にまず下線を引いてから選択肢を読む
複数選択 5〜6個の選択肢から2〜3個 正解をすべて選び、誤りを1つも選ばなかった場合のみ正解 各選択肢の正誤を独立して判断する。数を合わせるために無理に選ばない
正誤判定 記述ごとにYes/No 判断と理由が両方正しい場合のみYes 結論が正しくても、理由の条文番号や要件が誤っていればNo
並べ替え 4〜5個の手順を順番に並べる 全体の順序が一致 「前の段階の結果が次の段階の入力になるか」を基準に並べる
マッチング 左の項目と右の選択肢を結ぶ すべての組み合わせが一致 最も確実な組み合わせから消し、使わない選択肢がありうることを覚えておく

この試験の誤答選択肢は、多くの場合3つの方法で作られます。第1に、別々の約束を1つにまとめます(「学習に使わないので保存もしない」)。第2に、法律にない基準で義務を免除したり課したりします(「中小企業なので対象外」)。第3に、条文の動詞を変えます(「努めなければならない」を「しなければならない」にする)。各章の「間違えやすいポイント」は、この3つの型を章ごとに整理したものです。

6週間の学習計画

1日40〜60分、週5日を基準にしています。実務経験が豊富なら第1週と第2週をまとめても構いません。毎週の終わりには、手元に成果物が残るようにします。

週 範囲 取り組むこと 成果物
第1週 第1章 利用中のAIツール2つの公式文書を自分で探して読む データ条件比較表
第2週 第2章前半(定義〜高影響) 法律第2条と第31〜36条の原文を一度読む 機能別の義務判断表の草案
第3週 第2章後半、第3章前半 施行令第23〜29条、別表1・2を読み、判断表を修正する 告知・表示の設計案、処理根拠メモ
第4週 第3章後半、第4章 国外移転と自動化された決定の条文を読む データフロー図、1枚のAI利用規程
第5週 第4章の実習、第5章 NIST AI RMF Coreと生成AIプロファイルに目を通す リスク登録簿5行、エージェントの権限表
第6週 全体の復習 セルフチェックを解き直し、練習セットに取り組む 復習ノート、付録Cのチェックリスト

要点

条文は要約ではなく、一度は原文で読んでください。要約だけでは「しなければならない」「努めなければならない」「することができる」の違いを見落としがちです。この試験は、まさにその違いをよく問います。

表記と出典の方針

条文の表記。 法律の条文は「第31条第2項」、施行令は「施行令第23条第2項」のように記します。法律名を別途示さない条文は、その章で扱う法律の条文です。第2章は人工知能基本法、第3章は個人情報保護法を指します。同じ章で別の法律を引用する場合は法律名を付けます。

文言と義務の強さ。 法令の規定表現は義務の強さを示します。本書では次の区別を一貫して使います。

文言 意味 例
しなければならない/してはならない 義務・禁止 第31条第1項の事前告知
努めなければならない 努力義務。実施しなかっただけで直ちに違反とはならないが、公共調達などで不利になることがある 第35条第1項の影響評価
することができる 裁量または権限 第33条第1項の確認要請
適用しないことができる 例外が認められうる 施行令第23条第4項
みなす 法がそのように扱う 施行令第27条第3項の履行認定

ベンダー名と機能名。 製品・機能・設定の名称は公式文書の原表記(例:Zero Data Retention)をそのまま使い、モデルのバージョンと価格は扱いません。

架空の組織。 本文の会社や機関はすべて架空の名称です。

状況の明示。 未確定の事項や条文ではない政府方針はその旨を明記し、公式文書で確認できなかった内容は記載していません。

説明ボックス。 補足(NOTE)は追加の背景、要点(TIP)は必ず覚える点、注意(WARNING)は事故が起きやすい点、実習(EXAMPLE)は自分で取り組む課題です。