第2章 最初に尋ねて聞き直す

学習目標

  • 求める成果物が何であるかを明確にした質問を作成します。
  • 状況と対象(誰が読み、誰のためのものか)を伝え、回答を自分の事情に合わせます。
  • 長さと形式を指定し、得られた回答をすぐに使えるようにします。
  • 曖昧な質問を具体的な質問へと書き直します。
  • 最初の回答を見て物足りない点をピンポイントで指摘し、続けて修正を依頼します。
  • 新しい対話を始めるべきタイミングを見極め、必要な条件を改めて明記して新しく開始します。

はじめに

イ・チュンジャさんは、来月の友人の誕生日に贈るプレゼントに悩んでいました。AIチャットボットに「プレゼントをおすすめして」と書きました。回答として、ワイヤレスイヤホン、スマートウォッチ、香水、高級ワインといった一覧がずらりと並びました。どれもこれもイ・チュンジャさんの友人とはかけ離れたものばかりでした。「やっぱり機械には人の気持ちがわからないわね」とアプリを閉じようとしたその時、隣にいた娘が言いました。「お母さん、AIはお友達がどんな人か知らないじゃない。人に尋ねるみたいに話してみてよ」

イ・チュンジャさんは書き直しました。「70歳になる長年の友人の誕生日プレゼントを選ぼうとしているの。友人は膝が悪くて、最近は家で草花を育てるのを生きがいにしているわ。予算は5万ウォン前後で、直接手渡しするつもりよ。候補を5つだけ、理由を添えて短く教えて」。今度は小さな鉢受皿、じょうろ、ひざ掛け、植物の名札作りセットといった候補が理由とともに提示されました。イ・チュンジャさんはその中から2つを選んで花屋へ立ち寄りました。

変わったのはAIではなく質問でした。本章では、良い質問を作成する方法と、最初の回答が気に入らない場合に修正を依頼する方法を扱います。まずは対話画面を使う基本を身につけ、質問に盛り込むべき5つの要素(何を、なぜ、誰に、どれくらい、どのような形で)を1つずつ見ていきます。続いて、曖昧な質問を書き直す練習、最初の回答を推敲する言葉、新しい対話を始めるべきタイミングを順に扱います。試験において最も配点の比重が大きい章です。

重要な概念

対話画面を初めて使う

AIチャットボットアプリの画面は、会社ごとにデザインが多少異なりますが、基本構造は似ています。

  1. 画面の下部に入力欄があります。ここに質問を入力します。キーボードの代わりにマイクボタンを押して音声で入力できるアプリも多くあります。
  2. 質問を書き終えたら、送信ボタン(通常は矢印の形)を押します。
  3. 上部にAIの回答が表示されます。回答が長い場合は画面を上にスクロールして最後まで読みます。
  4. 続けて言いたいことがあれば、同じ入力欄に再び入力します。そうするとAIは直前の対話をふまえて文脈を繋げて理解します。これを続けて尋ねるといいます。
  5. まったく別の話をしたいときは、新しい対話ボタンを押して新しい画面で始めます。このボタンはアプリによって位置やデザインが異なりますが、通常は画面の上部や横に展開するメニューの中にあり、「新しいチャット」「新しい対話」と書かれていたり、「+」や鉛筆のマークで描かれていたりします。

要点

音声で入力すると、文字起こしの過程で言葉が変わってしまうことがあります。「今週の金曜日」が「今週のその曜日」と入力されてしまうような具合です。送信する前に、画面に表示された文章を一度読んでみてください。

質問は見知らぬ人への頼みごとである

タクシーに乗って「そこへ行ってください」と言っても、運転手はどこへ行けばよいかわかりません。「市役所前の大きな交差点、銀行の建物の前で降ろしてください」と言わなければなりません。運転手が道を知らないからではなく、自分がどこに行きたいのかを知らないからです。

AIも同様です。AIは世の中の多くの文章を読んできましたが、今回の依頼の事情は自分が教えてあげなければわかりません。自分の友人が何歳なのか、予算がいくらなのか、この文章を誰が読むのかはわかりません。一部のアプリは設定によって記憶(メモリ)機能や過去の対話を参考にして、自分について少し知っていることもありますが、今回の依頼の事情まで知っているわけではありません。わからない部分は、最も一般的で無難な内容で埋めようとします。そのため、曖昧に尋ねると、誰にでも当てはまる、それゆえに誰にとってもぴったりとは合わない回答が返ってくるのです。

Google Workspace 学習センターの「Gemini プロンプト作成のヒント」でも同様の方向性を推奨しています。友人や同僚に話すように自然に書き、曖昧な表現を避け、コンテキスト(状況)を多く提供するほど、AIが要求をより的確に理解して役に立つ回答を作成すると案内しています。

良い質問は、初めて会った人に依頼する手紙のようなものです。何を依頼するのか、なぜ必要なのか、誰のためのものか、どれくらい、どのような形で受け取りたいのかを盛り込みます。この5つの要素を1つずつ見ていきましょう。

求める結果を具体的に伝える

質問の1つ目の材料は、何を受け取りたいのかです。「プレゼントをおすすめして」では、何を受け取りたいのかが曖昧です。一覧なのか、1つだけ選んでほしいのか、どこで買えるかまで教えてほしいのかがわかりません。

成果物を明確に伝える方法は簡単です。「何を」+「作ってほしい」をセットで伝えます。

曖昧な表現 成果物が明確な表現
誕生日のメッセージ 誕生日の祝いメッセージを1通書いて
おかず 1週間分の夕食のおかずメニューを曜日ごとの表で作成して
旅行 1泊2日の日程の草案を時系列順に作成して
この案内文 この案内文から自分がやるべきことだけを番号付きで抜き出して
英語 この文章を飲食店の店員に見せる英語の1文に変えて

成果物を伝えれば、AIもどこで出力を止めるべきかがわかります。「メッセージ1通」と指定すれば、手紙3枚分もの長文が出てくることはありません。

「この案内文から自分がやるべきことだけを抜き出して」のように、AIに読ませるべき文章がある依頼なら、質問とともにその案内文のテキストをコピーして貼り付けるか、写真としてアップロードしなければなりません。AIは自分の手にある紙を見ることはできません。写真をアップロードする際は、氏名や電話番号などをあらかじめ隠しておきます(第4章)。

状況を伝える

2つ目の材料は、なぜ、どのような状況で使うのかです。同じ「お礼のメッセージ」であっても、状況によって内容はまったく異なります。

  • 引っ越してきた日に餅を配った近所の人から受け取った挨拶に返信するメッセージ
  • 葬儀に参列してくれた友人に送るお礼のメッセージ
  • 孫の満1歳の誕生祝い(トルチャンチ)にプレゼントを贈ってくれた同窓生に送るメッセージ

状況には、次のようなものが含まれます。

状況の要素 例
目的 お祝い、感謝、謝罪、依頼、案内、お断り
きっかけ 誕生日、退院、引越し、名節(伝統的な祝日)、集まりの日程変更
条件と制約 予算5万ウォン、膝が痛くて長く歩けない、糖尿病があるため甘いものは避ける
すでに決まっていること 日時と場所は決定済み、会費は2万ウォン
避けたいこと かしこまりすぎた言葉遣い、宗教的な表現

「糖尿病があるため甘いものは避ける」のように、健康上の事情を伝えなければならない場合があります。このようなとき、氏名や連絡先まで一緒に書く必要はありません。必要な事情だけを書き、誰であるかを特定できる情報は省くことがコツです。第4章で詳しく扱います。

対象を伝える

3つ目の材料は、誰のためのものであり、誰が読むのかです。同じ内容であっても、読む相手によって言葉遣いや語彙を変えなければなりません。

対象 伝えることで変わること
小学校2年生の孫娘 易しい言葉、短い文章、親しみやすいタメ口
70代の両親 敬語、1行を短く区切った平易な文章
長年の同窓生 気兼ねのない言葉遣い、昔の思い出を呼び起こす表現
初めて連絡する大家さん 丁寧な敬語、用件を前方に
韓国語がおぼつかない外国人の隣人 ごく易しい韓国語、または翻訳

対象を伝える言葉はシンプルです。「小学校2年生の孫娘が読むよ」「70代の高齢者が多い集まりのグループトークに投稿する予定だ」のように1文で十分です。言葉遣いも一緒に指定するとよいでしょう。「敬語で」「親しみを込めたタメ口で」「あまり堅苦しくならないように」といった具合です。

参考

「大きな文字で書いて」と頼んでも、AIは文字の大きさを変えることはできません。AIにできるのは、1行を短く区切ったり、易しい言葉を選んだりすることです。文字の大きさは、読む人のスマートフォンの設定で拡大します。

長さを決める

4つ目の材料は、どれくらいです。長さを指定しないと、AIは通常長めに文章を作成します。メッセージ1通が必要なのに手紙1枚分の長さが返ってきたら、再度縮めなければなりません。

長さを指定する指示の例は次のとおりです。

  • 「3行以内で」
  • 「メッセージ1通分の長さで」
  • 「100文字前後で」
  • 「候補は5つだけ」
  • 「1文で」
  • 「各項目は1行ずつ」

数字で指示すると、より確実に守られます。「短く」よりも「3行で」のほうが明確です。ただし、AIが文字数を正確に守れないこともありますので、厳守すべき長さである場合は、回答を受け取ったあとに自分で文字数を数えてみましょう。

形式を決める

5つ目の材料は、どのような形で受け取りたいのかです。形式は、受け取った回答をどこで使うのかに合わせます。

使用先 適切な形式の依頼表現
グループトークの告知 「グループトークにそのまま貼り付けられるように、記号や表を使わずに」
買い物 「スーパーの売り場ごとにまとめた買い物リストで」
複数の案の比較 「表形式で、項目は名称・メリット・デメリット」
手順が重要な事柄 「番号を振ったステップで」
声に出して読み上げる文章 「声に出して読みやすいように、短い文章で」
手書きで書き写す文章 「短く、絵文字や特殊記号なしで」

たとえば、グループトークに投稿する告知に表が含まれていると、スマートフォン上では表の表示が崩れてしまうことがあります。使用先を伝えておけば、AIがそれに適した形を選択してくれます。

5マス質問表

これまで見てきた5つの材料を1つの表にまとめると、次のようになります。質問を書く前に、この表を頭の中で埋めてみてください。すべてのマスを埋める必要はありません。回答が気に入らないときに、空いているマスを1つずつ埋めていけばよいのです。

マス 尋ねる内容 例
何を 受け取りたい成果物 お祝いメッセージ1通
なぜ 状況と目的、条件 同窓生の古希、直接行けなくて申し訳ない気持ち
誰に 読む人、言葉遣い 50年来の友人、気兼ねのないタメ口
どれくらい 長さ、個数 5行以内
どのような形で 形式、使用先 メッセンジャーで送るメッセージ、絵文字は1つ程度

この表を質問に落とし込むと、次のようになります。

[送信する質問]
50年来の友人が古希(70歳)を迎えたのだけれど、私が膝の手術のために祝宴に行けないの。
行けなくて申し訳ない気持ちとお祝いの気持ちを込めたメッセージを1通書いて。
気兼ねのないタメ口で、5行以内で、メッセンジャーで送るので絵文字は1つ程度でお願い。
[AIの回答例]
ヨンスク、古希本当におめでとう!
お祝いの席にはぜひ行きたかったのだけれど、膝のせいで行けなくて本当にごめんね。
私たちが初めて出会った16歳の頃がつい昨日のことのようなのに、もう70歳だなんて。
これからも今のように元気で、笑顔あふれる毎日でありますように。
足がすっかり良くなったら、美味しいものをごちそうするね ^^

参考

回答例の「ヨンスク」は、AIが勝手に創作して挿入した名前です。実際には名前を質問に入れていないため、AIが空白を適当な名前で埋めたのです。受け取った回答は送信する前に必ず読み、このような部分を自分の事情に合わせて修正します。

曖昧な質問を具体的な質問に変える

それでは、5マス質問表を使って曖昧な質問を修正してみましょう。直す際には、「AIは何を知らないのだろうか?」をまず考え、その空白を埋めていきます。

例1. おかずの悩み

  • 修正前:「おかず、何にしよう?」
  • AIが知らないこと:何人で食べるのか、誰が食べるのか、避けるべき食材、期間、形式
  • 修正後:「2人暮らし(70代夫婦)の1週間分の夕食のおかずを考えて。夫が塩分を控える必要があって、1回の買い物で1週間使い回したいの。曜日ごとの表にして、最後に買い物リストも添えて」

例2. 孫への説明

  • 修正前:「光合成って何?」
  • AIが知らないこと:誰に説明するのか、どれくらい分かりやすく、どれくらいの長さで
  • 修正後:「小学3年生の孫に光合成を説明してあげたいの。家にある植木鉢を例に挙げて、5文以内で、孫に直接話しかけるようなタメ口で書いて」

例3. フリマアプリ(中古取引)

  • 修正前:「自転車を売る文章を書いて」
  • AIが知らないこと:商品の状態、使用期間、傷や難点、価格、取引方法
  • 修正後:「フリマアプリで自転車を売ろうと思っているの。3年間乗っていて、タイヤは去年交換したし、前カゴに擦り傷があるわ。価格は8万ウォン、手渡しのみ。傷も隠さず正直に、10行以内で出品用の文章を書いて」

例4. 病院に行く前

  • 修正前:「膝が痛い」
  • AIが知らないこと:何を求めているのか(診断? 病院の準備?)、形式
  • 修正後:「来週、膝の診察で整形外科に行きます。お医者さんに尋ねる質問リストを5つだけ作成してください。診断はせず、質問リストだけにしてください」

例4に注目してください。「診断はせず、質問リストだけにしてください」と成果物を限定しました。第1章で確認したとおり、身体に関する医学的な結論を下すのはAIではなく医師です。その代わり、AIは病院で何を尋ねるべきかを整理するうえで大いに役立ちます。成果物を明確に指定すれば、AIをその得意な分野で活用できるようになります。

要点

具体的に尋ねるということは、自分の個人情報をたくさん書き込むという意味ではありません。「70代夫婦」「膝が悪い」のように事情は書きつつも、氏名・住所・電話番号のように誰であるかを特定できる情報は入力しなくても、十分に良い回答を得ることができます。

最初の回答を見て聞き直す

最初の回答が完璧に気に入るケースは稀です。最初から完璧な質問を書こうと苦心するよりも、最初の回答を受け取ったあとに続けて修正を依頼するほうがはるかに迅速です。オーダーメイドの服を仕立てるときに仮縫いをして「袖だけ少し詰めてください」と言うのと同じです。

修正を依頼する際のポイントは3つあります。

  1. 何が物足りないのかをピンポイントで伝えます。「いまいちだ」と言うよりも「長すぎるし、2行目が硬い」と伝えるほうが効果的です。
  2. 気に入った部分は残してほしいと伝えます。「1行目は良いのでそのまま残して」と言えば、AIが気に入っている部分まで変更してしまうのを防げます。
  3. 一度に多くを変更しすぎないようにします。直したい箇所が多い場合は、重要なものから1〜2点ずつ依頼します。

やってみましょう:お祝いメッセージの推敲

[最初の質問]
孫娘の小学校入学のお祝いメッセージを書いて。
[最初の回答例]
愛する孫娘へ
とうとう小学校に入学することになったことを、心からお祝いするよ。
新しい環境でたくさんの友達をつくり、学ぶ楽しさを知りながら、
心身ともに健康に成長することを、おばあちゃんはいつも祈っているよ。
...

最初の回答も悪くはありませんが、8歳の子どもが読むには言葉が難しく、長すぎます。続けて次のように入力します。

[続けて聞き直す]
良いけれど、孫娘は8歳なので自分で直接読むの。
難しい言葉(「環境」「成長」)は除いて、3行に縮めて。
「おばあちゃんはいつも祈っているよ」という想いは残してね。
[修正された回答例]
私のかわいい孫ちゃん、小学校へ行くのおめでとう!
新しいお友達と元気に遊んで、楽しく学んでね。
おばあちゃんはいつも祈っているよ。大好きだよ!

2回目の依頼には、物足りない点(難しい言葉、長さ)、理由(8歳が自分で読む)、残したい部分(祈っているという気持ち)がすべて含まれています。そのため、一度で求める回答にぐっと近づきました。

聞き直す表現集

よく使われる聞き直しの表現をまとめました。そのまま真似して使って構いません。

物足りない点 このように伝えてみてください
長すぎる 「3行に縮めて」「要点だけ残して」
難しすぎる 「小学生でも理解できるように易しい言葉に変えて」
硬すぎる 「友人に話すようにフランクに変えて」
軽すぎる 「目上の方にお渡しする文章なので、丁寧な敬語に変えて」
一部だけが惜しい 「2文目だけ書き直して。残りはそのまま」
別のニュアンスも見たい 「別の雰囲気でさらに3パターン書いて」
抜けている内容がある 「集合時間(午前10時)も入れて」
形式が見づらい 「表ではなく箇条書き(番号付きリスト)に変えて」
間違った内容がある 「集合場所は公園ではなく福祉館よ。直して」
理由が知りたい 「なぜこの順番にしたのか短く説明して」

最後の行の1つ上にある「間違った内容がある」をご覧ください。自分がすでに知っている事実が間違っているなら、正しい事実を伝えて修正させれば済みます。逆に、自分が知らない事実が正しいかどうか気になるときは、AIに聞き直すだけでは解決しません。その場合は第3章の方法で確認します。

わからなければ聞き返し、知らなければ知らないと言うように指示する

質問に必須となる情報をすべて書ききれないことがあります。何を書くべきかさえわからないことすらあります。そのようなときは、AIに対して先に質問してほしいと依頼することができます。

[送信する質問]
来月結婚する甥(姪)に祝辞を述べることになったの。
良い祝辞を書くためにあなたに何を教えるべきか、
まず質問を5つだけして。私が答えたら、そのあとに祝辞を書いて。

AIは「甥御さん(姪御さん)とどのような思い出がありますか?」「祝辞は何分程度を予定していますか?」といった質問をしてきます。それらに1つずつ答えていけば、5マス質問表が自然と埋まります。

わからないときにでっち上げ(ハルシネーション)をさせないためのフレーズもあります。第1章で予告した2つの文です。

  • 「確実でない場合は、わからないと答えてください。」
  • 「確実でない部分はでっち上げずに『要確認』と表示して。」

第1章で見たとおり、AIは知らない空白をもっともらしい言葉で埋めてしまいがちです。この言葉を添えておくことで、確認すべき箇所が一目でわかる回答を得られる可能性が高まります。ただし、この一言が誤った回答を完全に防いでくれるわけではありません。「要確認」の表示がない部分であっても、第1章の6つの確認用の問いに該当する場合は、しっかりと事実確認を行います。

新しい対話を始める

1つの対話画面の中で、AIはそれまでにやり取りした内容を引き継いで文脈を理解します。そのため、続けて聞き直すことが可能です。しかし、この性質があるからこそ、新しい対話を始めたほうがよい場合もあります。

このようなとき なぜ新しい対話のほうがよいのか
話題が完全に変わるとき(おかずの話 → 孫の宿題) 前の話が混ざって的外れな回答が出ることがある
対話が非常に長くなったとき 最初に出した条件をAIが見落とし始めることがある
修正を求めても何度も同じミスを繰り返すとき こじれた流れを断ち切り、最初から整理したほうが早い
別の人に関する事柄を尋ねるとき(自分の用件 → 友人の用件) 自分の事情と友人の事情が混ざらないようにする
前の対話で個人的な話を多くしたとき 続いて質問する別の話題にその話が反映されないようにする。ただし記憶機能がオンになっていると、新しい対話にも引き継がれることがある(第4章)

新しい対話が過去の対話をどれほど把握しているかは、アプリや設定によって異なります。記憶(メモリ)機能や過去の対話を参考にする機能が有効になっている場合、過去の対話の一部が新しい対話へと引き継がれることがあります。たとえば、OpenAIのヘルプドキュメント「Memory in ChatGPT」では、記憶機能が有効になっているとChatGPTが対話の中から関連する好みや情報を記憶でき、「Reference chat history」の設定が有効になっていると過去の対話の関連情報を今後の回答に活用できると説明されています。こうした機能が無効になっていれば、新しい対話は過去の対話の内容を知りません。いずれにせよ、必要不可欠な条件は新しい対話に改めて明記するのが確実です。その際、前の対話で気に入った回答や整理された条件をコピーしてきて、「この条件で書き直して」と指示すると便利です。

やってみましょう:こじれた対話を新しい対話で整理する

  1. 前の対話で決定した条件を短く整理する。例:「集まりの名称はヌルボム登山サークル、11月第2土曜日、午前9時、福祉館前、会費2万ウォン、弁当は各自持参。」
  2. 新しい対話を開く。
  3. 5マス質問表に合わせて一度に作成する。「登山サークルの会員向けグループトークに投稿する告知を書いて。下記の条件をすべて盛り込み、会員の大部分が70代なので1行を短く区切って易しい言葉を使い、記号や表は使わずに。」
  4. 整理した条件をその下に貼り付けて送信する。

参考

一部のサービスには、過去の対話を保存しない「一時的なチャット」のような機能もあります。たとえばOpenAIのヘルプでは、ChatGPTの一時的なチャット(Temporary Chat)は対話履歴に表示されず、記憶(メモリ)を作成したり変更したりしないと説明されています。このような機能については、第4章で個人情報と合わせて扱います。

さらに深く

聞き直しは何回までするか

聞き直しは何度も行うことができます。ただし、サービスや料金プランによって、利用できる量や1つの対話の長さに上限が設けられている場合があります。そして、同じ作業を10回も修正し続けているなら、やり方を変える潮時です。次のような基準を設けておくとよいでしょう。

  1. 3回修正しても同じ部分に物足りなさが残るなら、新しい対話を開き、5枠の質問表で最初から書き直します。たいてい最初の質問に抜けている枠があります。
  2. 新しい対話でもうまくいかないなら、自分が求めている形式の例を見せます(次節)。
  3. それでもうまくいかないなら、自分で直接書いたほうが早いかもしれません。AIが書いたものの中から良い文章をいくつか選んで、自分の文章に混ぜても構いません。

AIを使う目的は、時間と手間を省くことです。聞き直しに自分で直接書く以上の時間がかかるのであれば、その作業はAIにあまり向いていない作業なのかもしれません。それもまた有益な発見です。

例を見せると早い

言葉で説明するのが難しいニュアンスがあります。「わが家の口調」や「自分が普段使っているメッセージの雰囲気」といったものです。このようなときは、例を見せることが最も手っ取り早いです。

[送信する質問]
私が普段、家族のグループチャットで使っている口調はこんな感じ。
「みんなご飯食べた〜? 今週の日曜日に実家でお昼食べよう。おかずは私が作るね!」
この口調で、来月の父親の誕生日会の案内文を書いて。
日付と場所は後で自分で入れるから、[日付]、[場所]と空欄にしておいて。

例を提示すると、AIはその口調の長さ、文末の表現、波線(〜)のような癖まで真似してくれます。例は1、2個あれば十分です。この質問の最後の1行にも注目してください。日付と場所を空欄にして残してほしいと頼んでいます。AIが日付や場所をでっち上げないようにし、正確な事実は自分で埋めるやり方です。第1章の「3枠分割」を質問の中で実践したことになります。

このとき、例の中に他人の名前、電話番号、プライベートな話が含まれていないか確認します。家族のグループチャットを丸ごとコピーして貼り付けると、家族の名前や事情まで一緒に入ってしまいます。口調を示すための文章を1、2文だけ選び、名前は削除して書きます。

打ち明けすぎない

本章では「具体的に伝えなさい」と何度も強調してきました。しかし、具体的に話そうとすると、自然と個人的な話をたくさんしてしまいがちです。孫の名前、住んでいるマンション、患っている病気、預金残高といったことです。

良い回答を得るために必要なのは、たいてい事情であって身元ではありません。

必要な事情(書いてよいこと) 不要な身元(省くこと)
孫娘が8歳である 孫娘の名前、学校名
膝が悪くて長く歩けない 通院している病院と診療記録番号
予算は5万ウォンである 預金残高、口座番号
海沿いの街へ旅行に行く 自宅の住所、出発日と家を留守にする期間

左側の情報だけでも十分に良い回答が得られます。右側の情報を入れても回答の質は上がらないうえ、リスクばかりが大きくなります。この原則は、第4章の「伏せて尋ねる」で改めて練習します。

実務の場面

ヌルボム山岳会総務 ソ・ギョンジャさんの団体案内

状況。 ソ・ギョンジャさんは会員30名のヌルボム山岳会の総務です。11月の登山が雨の予報により1週間延期されました。会員の大部分が70代であるため、グループチャットの案内が長かったり分かりにくかったりすると、電話が何十本もかかってきます。ソ・ギョンジャさんはAIに「山岳会の登山延期の案内文を書いて」と入力しました。

最初の回答。 回答は丁寧でしたが、問題が3つありました。第1に、「雨天により、やむを得ず日程を順延することとなりましたのでお知らせいたします」のように難しい言葉が多く使われていました。第2に、AIが新しい日程を「11月第3日曜日」と勝手にでっち上げて入れました。実際には土曜日です。第3に、表が含まれていたため、スマートフォンで改行が崩れてしまいました。

捨てた選択肢。

  • 最初の回答をそのまま投稿し、日付だけを手作業で直す。 難しい言葉や崩れた表がそのまま残り、電話が殺到すると思われたため見送りました。
  • 「もっと良く書いて」と聞き直す。 どこが物足りないのかを伝えないと、AIが見当違いな場所を修正してしまう恐れがあるため見送りました。
  • AIをあきらめて自分で書く。 時間がなく、文章を整える作業はAIの得意分野であるため見送りました。

決定。 ソ・ギョンジャさんは5枠の質問表を使って続けて聞き直しました。「会員の大部分が70代だから、分かりやすい言葉に変えて(誰に向けて)。日程は11月第3土曜日だよ。私が伝えた事実だけを書いて、日付をでっち上げないで(事実の訂正)。グループチャットに貼り付けるから、表は使わずに短い行で(どのような形式で)。5行以内で(どれくらいの分量で)。」新しい案内文は短く明瞭でした。ソ・ギョンジャさんは投稿する前に、日付と集合時間をカレンダーともう一度照らし合わせました。その日かかってきた電話は、わずか2本だけでした。

イ・チュンジャさんの中古取引の出品文

状況。 イ・チュンジャさんは、孫たちが大きくなって使わなくなったベビーカーを中古取引アプリで売ることにしました。AIに「ベビーカーの販売文を書いて」と頼んだところ、「ほぼ新品同様の最高級ベビーカー! 状態は極上!」といった誇張された文章が出力されました。実際のベビーカーは5年間使用しており、ハンドルの革が少し剥がれていました。

思考のプロセス。 イ・チュンジャさんは、誇張された文章で売ってしまうと、後で購入者とトラブルになりかねないと考えました。AIは出品文によくある口調を真似しただけで、このベビーカーの実際の状態を知りません。状態を知っているのは自分だけです。

捨てた選択肢。

  • 誇張された文章をそのまま使う。 事実と異なる文章は購入者を騙すことになるため、見送りました。
  • AIに「もっと売れるように書いて」と頼む。 さらに誇張された文章が出てくる恐れがあるため、見送りました。

決定。 イ・チュンジャさんはこのように聞き直しました。「誇張せずに事実通りに書いて。5年使用、ハンドルの革が少し剥がれている、車輪と折りたたみ機能は問題なし、価格は3万ウォン、直接手渡しのみ。傷や難点は隠さずに最初から明かして。10行以内で。」新しい文章は正直ですっきりしていました。イ・チュンジャさんは写真もAIで加工せず、ありのままの姿を撮影して掲載しました。難点まで明かしたおかげで、購入者は迷うことなく取引してくれました。

注意

このようなときは立ち止まってください。 AIが作成した出品文、レビュー、案内文に自分が確認していない事実(新品、正規品、送料無料、効果の保証など)が含まれているなら、そのまま投稿しないでください。その文章の責任を負うのはAIではなく、投稿した本人です。

間違えやすいポイント

  1. 「AIは賢いから、短く尋ねてもよしなに察してくれる。」 AIは、今回の依頼の事情をこちらが伝えない限り分かりません。記憶機能があるアプリでも同様です。分からない部分は最も一般的な内容で補おうとするため、漠然とした質問には漠然とした回答が返ってきます。
  2. 「具体的に尋ねるというのは、自分の情報をすべて書くという意味だ。」 必要なのは事情(年代、条件、予算)であり、身元(名前、住所、電話番号)ではありません。
  3. 「最初から完璧な質問を書かなければならない。」 最初の回答を見てから聞き直す方が、より早く簡単です。質問は対話によって完成します。
  4. 「気に入らなければ『書き直して』とだけ言えばよい。」 何が物足りないかを伝えなければ、AIは見当違いなところを変更してしまいます。物足りない点と残したい点を合わせて伝えます。
  5. 「聞き直しによって事実も正すことができる。」 自分が知っている事実を伝えて修正させることはできますが、自分が知らない事実が正しいかどうかは、聞き直しでは確認できません。
  6. 「新しい対話を開いても、AIが先ほど伝えた条件を自動で引き継いでくれる。」 アプリや設定によって、一部が引き継がれることもあれば、まったく引き継がれないこともあります。どちらかを当てにせず、必要な条件は改めて書きます。
  7. 「1つの対話ウィンドウですべてを済ませる方が楽だ。」 話題が混ざると見当違いな回答が返ってきたり、対話が長くなると前の条件を見落としたりすることがあります。話題が変わったら新しい対話を開きます。
  8. 「『でっち上げないで』と書いたのだから、もう間違った回答はない。」 このような依頼は役に立ちますが、誤った回答を完全に防ぐことはできません。確認は依然として必要です。

ひと目でわかるまとめ

概念 一行まとめ 覚えておくべきこと
質問=見知らぬ人への頼み事 AIは今回の依頼の事情を知らない 分からない項目は一般的な内容で埋められる
何を 受け取りたい成果物 「何を+作ってほしい」
なぜ 状況、目的、条件 事情は書くが身元情報は省く
誰に 読む人と口調 「8歳の孫娘が自分で読む」という1文で十分
どれくらい 長さと数 「短く」より「3行で」
どのような形で 使う場所に応じた形式 グループチャットなら表なしの短い行
聞き直し 続けて推敲を依頼する 物足りない点をピンポイントで指摘+良い部分は残す
逆質問の依頼 「先に質問を5つして」 何を書けばよいか分からないとき
空欄を残す 事実は [日付] のように空欄にさせる でっち上げる隙をなくす
新しい対話 話題が変わったときやこじれたとき 前の対話が引き継がれるかはアプリや設定ごとに異なるため、条件を改めて書く

公式ドキュメントで確認する

セルフチェック

2-1. 本章の「5マスの質問表」における5つのマスの名前を書き、マスごとにご自身の生活における例を1つずつ挙げてください。

2-2. 「キムチチゲのおいしい作り方を教えて」という質問を、5マスの質問表を使ってより具体的に書き直してください。修正した質問には名前や住所を入れないようにしてください。

2-3. 最初の回答が気に入らないとき、単に「書き直して」とだけ言うよりも効果的な聞き直しのコツを3つ書いてください。

2-4. 回答を受け取って使う場所が以下の場合、形式をどのように指定すればよいか、1行ずつ書いてください。(ア) 家族のグループチャット (イ) スーパーで確認する買い物リスト (ウ) 高齢者集会所で声に出して読み上げる案内

2-5. 新しい対話を始めた方がよい場合を2つ挙げ、新しい対話を開く際に必ず行うべきことを1つ書いてください。

2-6. AIに対して日付や店名を「空欄にしておいてほしい」と依頼するとよい理由を、第1章の内容と関連付けて説明してください。

2-7. まだ何を尋ねるべきかよく分からない事柄を1つ選び(例:初めての海外旅行の準備)、AIが自分に対して先に質問するよう依頼するプロンプトを書いてください。

実習課題

実習

同じ依頼、2つの質問(40分)

  1. 日常生活の中の頼み事を1つ選ぶ(例:誕生日プレゼント選び、1週間分のおかず、孫への概念の説明)。
  2. まず1行の漠然とした質問を送信し、回答を保存するかメモしておく。
  3. 新しい対話を開き、5マスの質問表を埋めて同じ依頼を具体的に送信する。名前・住所・電話番号は入れない。
  4. 2つの回答を並べて、「そのまま使えるか」「自分の事情に合っているか」「修正すべき箇所が何カ所あるか」を比較する。

完了基準: 漠然とした質問と具体的な質問、2つの回答がともに残っており、5つのマスのうちどのマスを埋めたことが回答を最も大きく変えたかを1〜2文で説明できます。具体的な質問に身元情報が一切含まれていません。

実習

3回以内に推敲する(40分)

  1. 実際に送信するメッセージや文章を1つ選ぶ(お礼のメッセージ、集まりの告知、フリマなどの出品文)。
  2. AIに最初に依頼し、最初の回答を受け取る。
  3. 最初の回答から、物足りない点2つと良かった点1つを書き留める。
  4. 「聞き直しの表現集」を参考に、物足りない点は修正し、良かった点は残すよう続けて依頼する。最大3回まで聞き直す。
  5. 日付、時間、場所、価格のように事実が含まれる部分は、自分が把握している事実と一致しているか直接確認する。

完了基準: 最初の回答と最終的な回答、その間に送信した聞き直しの文がすべて残っており、最終的な回答を実際に送信できるレベルまで推敲されています。3回以内で終わらなかった場合は、何が不足していたのかを記述し、新しい対話で再試行した記録が残っています。