第1章 AI広告コピーと実証
学習目標
- 表示広告法(韓国)が禁止する不当な表示・広告の4類型を区別し、AIが作成した文言から各類型を見つけ出します。
- 一文ごとに事実の主張か主観的表現かを見分け、実証の対象を選定します。
- 実証資料が備えるべき要件(方法、独立性、直接の関係)を説明し、提示された資料が要件を満たしているかを判断します。
- 最上級・排他的表現と比較表現、価格・割引表現を使用できる条件を判断します。
- AIが捏造した数値や出典を原文との照合によってふるい落とす検収手順を設計します。
- 実証資料によって確認された範囲に合わせて文言をリライトします。
はじめに
おかず定期便サービスの新人マーケターが、生成AIに「当社のおかず定期配送を紹介する詳細ページのコピーを書いて」と依頼しました。3秒で出力された初稿は滑らかでした。「全国おかず定期便第1位」、「定期継続率92%」、「栄養士が設計したバランス献立」、「おふくろの味そのまま」。マーケターは文言の出来が良かったためそのまま掲載しようとしましたが、チーム長の一言の質問で立ち止まりました。「第1位は誰がいつ集計したものですか?」
答えられる人はいませんでした。社内には順位の集計データがなく、定期継続率は実際には71%であり、献立は栄養士ではなくメニュー企画者が作成したものでした。AIは嘘をつこうとしたわけではありません。詳細ページという文章の「体裁」をよく学習しており、そうした文章には通常、順位や数値、専門家が登場するため、それらしいものを当てはめたにすぎません。しかし、広告に掲載された瞬間、それらの文章は会社の主張となり、会社はその主張を証明できなければなりません。
本章では、その証明のルールを扱います。まず、表示広告法が何を不当な広告と見なすのか、消費者が騙される「おそれ」をどのような基準で判断するのかを見ていきます。次に、実証責任の及ぶ範囲と実証資料の要件を公正取引委員会の告示から読み解きます。その後、実務で頻繁に問題となる最上級・比較・価格・特許・AI技術の表現を一つずつ確認し、最後にAIの初稿を一文単位で分類してリライトする手順を学びます。
重要な概念
表示、広告、そして責任を負う事業者
表示広告法において、表示とは事業者が商品の容器・包装、事業所の掲示物、権利証書などに記載したり貼り付けたりした文字・図形、および商品の特性を表す包装のことであり、広告とは新聞・放送・電気通信などにより消費者に対して商品に関する事項を広く知らせ、または提示することです(第2条)。オンラインモールの詳細ページ、検索広告、SNS広告、アプリのプッシュ通知は、すべて広告の範囲に含まれます。
本法における義務は、事業者等、すなわち広告を行う事業者および事業者団体にあります。誰が文章を書いたかは関係ありません。コピーライターが書いたのであれ、代理店が書いたのであれ、生成AIが書いたのであれ、その文章を自社商品の広告として発信した会社が責任を負います。第3条は、不当な表示・広告を自ら行うことだけでなく、「他の事業者等に行わせること」も禁止しています。そのため、代理店やインフルエンサーに委託した広告であっても、広告主の責任を免れることはできません。
要点
AIサービスの利用規約は、会社とAIサービス提供者との間の契約です。消費者や公正取引委員会に対する広告の責任を、AIサービス提供者に転嫁することはできません。
不当な表示・広告の4類型
第3条第1項は、消費者を騙したり誤認させたりするおそれがあり、公正な取引秩序を害するおそれがある表示・広告として4つの類型を挙げています。施行令第3条がそれぞれの定義を定めています。
| 類型 | 施行令第3条の定義 | AIの初稿に見られる現れ方 |
|---|---|---|
| 虚偽・誇張 | 事実と異なり、または事実を過度に誇張して行う表示・広告 | 実在しない順位、誇張された販売量、根拠のない効能の数値 |
| 欺瞞 | 事実を隠蔽したり縮小したりするなどの方法 | 解約違約金、追加費用、適用条件を省いて特典のみを強調 |
| 不当比較 | 比較の対象・基準を明確に示さず、または客観的根拠なしに自社のものが優良・有利であると行う表示・広告 | 「他社比2倍」、「業界平均より速い」 |
| 誹謗 | 客観的根拠のない内容で、または事実であっても不利な事実のみを取り上げて他の事業者やその商品を誹謗 | 競合他社の製品を「有害物質まみれ」と表現 |
欺瞞審査指針は、「脱落」を重要な事実を最初から明示しないこと、「隠蔽」を過度に小さな文字や短時間での表示など消費者が現実的に認識しにくい形で表示すること、と定義しています。AIは特典を短く魅力的に要約することに長けているため、条件や制限事項を脱落させる欺瞞型の誤りを頻繁に生み出します。
消費者誤認性はどのように判断されるか
指定告示は、不当な表示・広告の判断基準として消費者誤認性と公正取引阻害性を挙げています。実務担当者が必ず知っておくべき判断原則は5つあります。
- 通常の注意力を有する一般消費者を基準とします。ただし、特定の集団を対象とした広告は、その集団の平均的な人を基準とすることができ、指定告示は医師、患者、子どもを例として挙げています。
- 消費者が受ける印象を基準とします。事業者の意図は判断基準にはなりません。
- 全体的・究極的な印象を考慮します。個々の文章が事実であっても、配置や強調によって作り出された全体の印象が事実と異なる場合は問題となります。
- 誤認させる傾向と可能性があれば十分であり、実際に騙された消費者が存在することの証明は不要です。
- 誰が見ても明白な誇張であるか、社会的に容認される広告的表現(指定告示の例:「最適な田園要地」、「最高の講師陣」)、および味・感覚・外見・匂いといった主観的判断は、誤認性があると見なすことは困難です。
公正取引阻害性は、広告が消費者の合理的な購買決定を妨げるおそれを考慮します。指定告示は、効能・品質、健康・安全、価格・撤回権、広告主とおすすめを行う者(推薦者)の経済的利害関係のように、購買決定において重要な事項を隠蔽・脱落させた場合、阻害性が認められる可能性が高いと説明しています。
事実の主張と主観的表現の見分け方
実証運営告示は、事実に係る事項を「表示・広告において主張した内容のうち、合理的な根拠や客観的な資料等を通じてその真偽の判断が可能な内容」と定義しています。分かりやすく言えば、「正しいか間違っているかを資料によって判断できる文章」です。
| 文章 | 分類 | 理由 |
|---|---|---|
| 「発売1年で20万個販売」 | 事実の主張 | 販売記録によって判断できる |
| 「国内初のワイヤレス充電タンブラー」 | 事実の主張 | 発売履歴によって判断できる |
| 「保温12時間持続」 | 事実の主張 | 試験によって判断できる |
| 「朝が軽やかになる一杯」 | 主観的表現 | 判断すべき事実がない |
| 「手にしっくりなじむグリップ感」 | 主観적表現 | 感覚に対する判断である |
境界にある表現もあります。「最高の味」は味に対する主観的判断に近いですが、「味の評価第1位」は誰かの評価結果を主張しているため、事実の主張です。形容詞ではなく、「資料によって判断できる主張が含まれているか」を基準として見てください。
実証責任の構造
第5条は、実証の枠組みを定めています。
- 事業者等は、自らが行った表示・広告のうち事実に係る事項を実証できなければなりません(第1項)。要請を受けた後に資料を作成するのではなく、広告を行う時点で既に証明できなければならないという意味です。
- 公正取引委員会は、違反のおそれがある場合、内容を具体的に明示して資料の提出を要請することができます(第2項)。
- 要請を受けた事業者は15日以内に提出しなければならず、公正取引委員会が正当な理由を認めた場合は期間を延長することができます(第3項)。
- 提出しないまま広告を継続した場合、公正取引委員会は資料を提出するまで広告の中止を命じることができます(第5項)。
2026年9月3日に施行された実証運営告示の改正は、延長事由を天災地変、合併・買収、更生・破産手続、帳簿・証拠書類の押収、火災・災害による重大な事業障害のように具体的に列挙し、その事由が消滅した日から15日以内に限って延長できるようにしました。期間内に提出しなければ過料の対象となり、その時点で広告を行っていれば中止命令の対象となります。「試験結果が出るまで待ってほしい」という事情は、告示が列挙する事由には該当しません。
何が実証資料となるのか
実証運営告示は、合理的根拠として認められる実証資料の一般的な要件として3つをすべて満たすよう定めています。
- 方法:試験結果、調査結果、専門家の見解、学術文献、その他科学的かつ客観的な資料のいずれかであること
- 手順:客観的かつ科学的な手順と方法によって作成されていること
- 直接の関係:資料の内容が広告の主張と直接的な関係を有すること
施行令第4条は、実証のための試験・調査を学術的または産業界で一般的に認められた客観的方法で行い、法令に基づく機関または事業者から独立して経営されている機関で行うよう定めています。事業者またはその系列会社が運営する機関は、独立した機関ではありません。ただし、独立した機関が存在しない場合や、営業秘密の保護、過大な費用といった事情が認められる場合には例外があります。
資料の種類ごとの要件は以下のとおりです。
| 資料 | 実証運営告示の主な要件 |
|---|---|
| 試験結果 | 事業者から独立した試験機関、当該分野の専門能力(個別法に基づく機関、韓国認定機構(KOLAS)が認定した公認試験機関など)、政府・学会・業界が認める試験方法、一般的に認められる試料採取(事業者が任意に提出した試料は不可) |
| 調査結果 | 独立した調査機関、目的に合致した標本の代表性、正確な回収・報告、設問の適合性、第三者による公正な実施、調査目的の非認知性 |
| 専門家の見解 | 当該分野の専門家(博士、国家専門資格など)、専門知識に基づき公式に表明された見解、団体である場合は公式な意見決定手順 |
| 学術文献 | 韓国研究財団登載学術誌、国際引用索引であるSCI・SSCIに登載された学術誌、またはこれと同等レベルの学術誌に掲載された文献 |
注意
会社が自社製品の使用経験がある消費者に直接実施したアンケートは独立性がないと見なされやすく、製品を使用したことがない人に効能を尋ねたアンケートは標本抽出が適切でないと見なされやすいです。実証運営告示が直接挙げている例です。
直接の関係:資料は本当にその主張を証明しているか
資料が存在していても、広告の主張と直接の関係がなければ実証にはなりません。実証運営告示は次のような例を挙げています。
- 効能成分が含まれていても、含有量が効能を発揮できる最小基準に満たなければ、成分の効能資料は製品の効能の根拠にはなりません。
- 抗菌哺乳瓶の効果を主張しながら、哺乳瓶が使用される環境ではなく素材のみを試験した結果を提出する場合です。
- 試験成績書の性能が、実際に流通する完成品において発揮されない場合です。
- 「すべての原料がオーガニック」と謳いながら一部の原料のみを証明した場合は、部分的にしか関係がありません。
生成AIは、「銅には抗菌効果がある」という一般知識と「当社の枕カバーは菌の心配がない」という製品の主張を安易に結び付けがちです。検収者は2つの文章の間にある隔たり、すなわち成分・素材・実験室の事実が、完成品・実際の使用環境における主張へと飛躍する箇所を見つけ出さなければなりません。
最上級と排他的表現
指定告示は、「最大」、「最高」、「初」、「第一」、「唯一」のような排他性を帯びた絶対的表現によって競合他社よりも著しく優良または有利であると誤認させる広告を不当と見なします。ただし、事業者が明白に立証するか、客観的資料により事実に合致しており競合事業者や消費者に被害を与えない場合は使用することができます。
実務では3つに区分します。
- 事実型最上級:「国内初」、「売上第1位」、「最長バッテリー」のように確認可能な事実を主張します。期間・範囲・集計機関を明示した客観的資料が必要です。
- 評価型最上級:「満足度第1位」のように誰かの評価結果を主張します。実証運営告示は、順位表現を実証要請の主な対象として例示しています。
- 広告的レトリック:「最高の一日のために」のように比較対象も事実もない修辞です。指定告示が言う社会的に容認される広告的表現に近いです。
AIの初稿に見られる最上級は、大部分が1番や2番の体裁をとっています。「根拠資料がなければ削除する」をデフォルトとし、資料がある場合はその範囲を文言の近くに明記してください。
比較表現
比較審査指針の一般原則のうち、比較広告の基本要件は3つあります。比較は消費者に対して有用かつ正確な情報を提供するものでなければならず、比較の対象と基準が明確で内容および方法が適正でなければならず、法令に基づく機関または事業者から独立した機関において客観的な方法で実施された試験・調査結果によって実証されなければなりません。一般原則の4番目の項目は、指針の例示がすべてではなく、例示に該当しても消費者の誤認のおそれや公正取引阻害のおそれがなければ不当な比較には当たらない場合もある、と補足しています。
| 点検項目 | 不当な比較の例(審査指針) |
|---|---|
| 対象 | 同等の競合製品があるにもかかわらず、競合他社の旧型・生産終了モデルと比較 |
| 基準 | 自社製品の夏季販売量と競合製品の冬季販売量、付加価値税込み料金と税抜き料金の比較 |
| 条件 | 常温での性能と高温・低温での性能を比較 |
| 脱落 | 比較基準と不可分の関係にある重要な事項(給付制限事由など)の隠蔽 |
競合他社名を直接記載しなくても、隠喩や類似した記号によって消費者がどの会社であるかを認識できる場合は比較広告と見なされます。「他社比」とだけ書けば問題ないという考えは誤りです。
価格と割引表現
AIは割引バナーに「定価」、「最大70%」、「本日限り」のような決まり文句を自然に付けてしまいます。指定告示は、価格表示に具体的な基準を設けています。
- 従前取引価格とは、事業者が同一商品を最近の相当期間(過去20日程度)に実際に販売した価格であり、その期間中に価格の変動があった場合はそのうちの最低価格です。実際に販売したことのない価格を自社の従前取引価格であるかのように「定価」として掲げ、割引率を算出することは不当です。多数の代理店を通じて販売する製造業者が希望小売価格を基準とする場合や、開店記念割引において時価を基準とする場合は、告示が定める個別の要件および基準の明示義務に従います。
- 一部の商品や一部の店舗の割引をあたかも大部分であるかのように表示したり、高い割引率の商品が一部にすぎないのに大部分がそうであるかのように誇張したりすることは不当です。
- 実際とは異なり限定された期間や数量のみ販売するかのように表示したり、割引イベントが終了したにもかかわらず広告物をそのまま放置したりすることも不当です。
割引バナーを検収する際は、販売記録(直近の価格)、品目別の割引率の分布、実際のイベント期間および在庫を手元に置き、文言と照合します。
特許、認証、AI技術の表現
特許。 指定告示は、特許登録そのものが性能・効能や安全性を公認するものではないにもかかわらず、特許の事実のみをもって効能を広告することを不当として例示しています。「特許取得の構造」は事実であっても、「特許取得の構造で膝の負担40%軽減」の後半部分は別途実証しなければなりません。
認証とマーク。 実証運営告示は、安全・環境・新技術に関する認証表示を実証要請の主な対象として挙げています。認証の範囲(どの項目を、いつ、どの製品について)を超える表現は避けなければなりません。
AI技術の表現。 2026年9月に改正された実証運営告示は、「人工知能(AI)技術でより安全な」のような新技術活用表現を実証要請の主な対象の例示に追加しました。「AIが分析してぴったりおすすめ」、「AI精度95%」といった文言は、機能の存在だけでなくその効果まで主張しているケースが多く見られます。精度の数値はどのようなデータと環境で測定されたものか、その条件が消費者の実際の使用条件と同一であるかを確認してください。
生成AIが生み出す事実誤認の類型
AIが広告の初稿で生み出す誤りは、概ね6つあります。
| 類型 | 例 | 検収方法 |
|---|---|---|
| 捏造された数値・出典 | 実在しない論文、それらしい満足度 | 原文を直接探し、見つからなければ削除する |
| 条件の脱落 | 実験室の結果から試験条件が抜け落ちる | 根拠資料の条件を文言の横に復元する |
| 範囲の拡張 | 生地の試験を完成品の効果へ、アプリ利用者の結果を全顧客へ | 資料の対象と広告の対象を一致させる |
| 習慣的な最上級 | 「業界最高」、「国内唯一」 | 排他的表現は基本的に削除する |
| 省略された不利な条件 | 違約金、追加費用、適用対象の制限 | 取引条件チェックリストと照合する |
| 実物と異なる演出画像 | 実際よりボリュームのある料理写真、実際の使用結果のように見える合成ビフォー・アフター | 画像も広告の一部である。実物・実際の結果と照合する |
AIが出典を提示したからといって、根拠が成立するわけではありません。生成AIは、実在しないタイトルや著者名をそれらしい形式で作り出すことができます。出典は、人間が原文を開いて数値と条件を確認して初めて根拠となります。
実証が必要な表現の見つけ方:文章分類の手順
AIの初稿を受け取ったら、以下の順序で文章を分類します。
- 初稿を一文単位に分解し、番号を振ります。
- 各文に事実の主張があるかを表示します。数字、順位、最上級、比較、効能・性能、認証・特許、専門家・団体・消費者の評価、価格・割引率、期間・数量限定がシグナルです。
- 事実の主張がある文ごとに、必要な根拠の種類(販売記録、試験成績書、調査報告書、認証書など)を記入します。
- 根拠の担当者が資料を添付し、資料の対象・条件・期間を記入します。
- 資料がなければ削除し、資料はあるものの範囲が異なる場合は、次の手順に従ってリライトします。
主観的表現は実証の対象からは除外しますが、ブランドトーンや権利侵害(第5章)の検討はそのまま経るようにします。
資料に合わせてリライトする
リライトの原則は、「資料によって確認されたことのみを、確認された範囲内で」です。
| 初稿 | 確認された資料 | リライト後の文言 |
|---|---|---|
| 「全国おかず定期便第1位」 | 順位の集計なし | 削除 |
| 「定期継続率92%」 | 2026年上半期の定期継続率71% | 「2026年上半期 定期継続率71%(自社注文記録基準)」または削除 |
| 「栄養士が設計した献立」 | メニュー企画者が設計 | 削除。栄養士の監修を実際に受けているのであれば、その事実に基づいて書き直す |
| 「おふくろの味そのまま」 | 主観的表現 | 維持(ブランドトーンの検収) |
リライトした文言が、かえって範囲を広げてしまっていないかも確認してください。自社の旧モデルとの比較を「業界最高」へ、生地の試験を「菌の心配がない」へと変更することは、修正ではなく新たな誤謬を生み出したことになります。
さらに深く
ただし書きはなぜ解決策にならないのか
「個人差があります」、「実際の効果は環境により異なる場合があります」のようなただし書きは、広告実務でよく使われます。しかし、ただし書きは主張そのものを変えるわけではありません。誤認性は全体的・究極的な印象で判断されるため、最初の画面に大きく「99%除去」を掲げ、一番下に小さな文字でただし書きを付けたとしても、消費者が受ける印象は依然として「99%除去」のままです。欺瞞審査指針では、過度に小さな文字や短い表示時間によって消費者が現実的に認識しにくいように表示することを「隠蔽」と定義しています。
ただし書きが意味を持つのは、主張がすでに実証されており、その実証の条件を消費者が認識できるよう主張の近くに明記している場合です。言い換えれば、ただし書きは実証された主張の範囲を正確に伝えるための道具であり、実証されていない主張を成り立たせるための道具ではありません。
AIをチェックツールとして使う際の役割分担
生成AIはチェック業務にも活用できます。数百個の文言から数字・順位・最上級・比較表現を見つけ出してマーキングする作業は、AIが迅速かつ綿密に行えます。しかし、マーキングされた文章が正しいかどうかを判定する作業は、AIに任せることはできません。判定の根拠は、会社の販売記録、試験成績書、調査報告書のように、AIが閲覧できない、あるいは確認する権限のない資料にあるためです。
推奨される役割分担は次のとおりです。AIは検知(事実の主張候補のマーキング)と整理(必要な根拠の種類の提案)を担当し、人間は照合(資料と文言の比較)と決定(維持・修正・削除)を担当します。同じモデルが作成した文言を同じモデルが「問題ない」と判定する構造は避けてください。自らの出力結果を自らレビューする構造は、同じ錯覚を繰り返しやすいためです。
2026年改正の実証運営告示が変えた点
2026年9月3日に施行された改正は、AIマーケティングの実務に2つのシグナルを与えています。第1に、AIのような新技術を活用したという表現が、実証要請の主要な対象例に含まれました。「AIパーソナライズ」「AI分析」がマーケティングの基本フレーズとなった今、その言葉が効果や安全性を暗示しているのであれば、資料によって裏付けなければなりません。第2に、提出期間の延長事由が具体的に限定されました。資料を「後から用意できる」という期待のもとで広告を先に出すやり方は、さらに危険になりました。告示では、事業者が実証方法や判断基準を事前に点検できるチェックリストも別紙として設けられています。
実務の場面
音の調べ:ワイヤレスイヤホン詳細ページの3つの文
音響機器ブランド「音の調べ」は、新型ワイヤレスイヤホンの発売にあたり、生成AIで詳細ページを作成しました。チェック担当者は文の分類手順に従って草案を分解し、事実の主張が含まれる3つの文に印を付けました。①「業界最長40時間バッテリー」、②「音質満足度97%」、③「耳にぴったりフィットする快適な装着感」。
①は事実型の最上級表現でした。根拠資料の担当者が確認したところ、40時間は充電ケースを含め、音量50%、ノイズキャンセリングをオフにした状態で社内試験室が測定した数値でした。競合製品の中にはケース込みで45時間を謳っているモデルもありました。社内試験室は事業者から独立した試験機関ではありませんでした。担当者は「業界最長」を削除し、独立した試験機関の結果が出るまではバッテリー駆動時間の数値を詳細ページに掲載するのを見送る案を出しました。チーム長は「どうせ大差ないのだから『業界最高水準』に変えよう」と提案しましたが、担当者はその表現も排他的な表現であり同様の立証が必要であるとして受け入れませんでした。
②の根拠は、発売前に体験モニター200人に対して会社が直接実施したアンケートでした。体験モニターは製品を無料で提供された人々でした。担当者は実証運営告示の調査結果要件(独立性、標本の代表性)を挙げ、この数値は使用できないと判断しました。マーケティングチームは「体験モニターの97%が満足」に変えれば事実のままだと反論しましたが、担当者はその文言も結局は製品の音質が優れているという印象を与え、無料製品を受け取った人々の回答であるという事実が抜け落ちれば誤認のおそれが残ると考えました。結論として、発売後に独立機関による調査を企画し、それまでは数値を使用しないことになりました。
③は主観的表現であるため実証の対象ではありませんでした。ただし、「耳の健康に良い」という言葉が付いていたAIの第2バージョンは健康効果の主張へと変わってしまうため、採用しませんでした。チェックシートには文番号、分類、根拠資料、決定、決定理由が記録され、不採用となった代替案(業界最高水準、体験モニターの97%)も併せて記録されました。
ふんわりマット:「国内初のエコ素材」と「滑り99%防止」
ヨガマットブランド「ふんわりマット」のAIによる草案には、「国内初のサトウキビ素材ヨガマット」と「滑り99%防止」が含まれていました。マーケターは、どちらも会社の研究所の資料があるから問題ないと主張しました。
チェック担当者はまず「初」から確認しました。会社が保有していたのは自社製品の発売日だけであり、国内に同じ素材のマットがそれ以前になかったことを示す資料はありませんでした。オンラインモールを検索してみると、2年前に似た素材を使用していると広告していた輸入品が存在しました。事実が確認されていない排他的な表現であるため、削除しました。マーケターは「国内初クラス」のように曖昧にして使おうと提案しましたが、同様の印象を与える表現であるため却下しました。
「滑り99%防止」の根拠は、会社の研究所が乾燥したマットの上で測定した摩擦試験でした。ヨガ中に汗が落ちた濡れた状態のデータはありませんでした。担当者は2つの問題を指摘しました。第1に、会社の研究所は事業者から独立した試験機関ではないため、施行令第4条の例外事由に該当するかどうかから検討しなければなりません。第2に、乾燥状態の結果を「滑り防止」という一般的な主張に広げてしまうと、試験条件から逸脱することになります。結論として、公認試験機関に乾燥・湿潤の2つの条件での試験を依頼し、結果が出るまでは「表面の質感を活かしたグリップ」のような事実の主張を含まない表現を使用することにしました。詳細ページの一番下に「使用環境により異なる場合があります」と記載しようという意見は、ただし書きは主張を実証するものではないという理由から受け入れられませんでした。
間違えやすいポイント
- 「AIが書いた文言の正確性はAI会社の責任である」 広告の責任は広告を行った事業者にあります。AIサービスの利用規約によって、消費者や公正取引委員会に対する責任を転嫁することはできません。文章を作成したツールが何であれ、広告を出した会社が実証しなければなりません。
- 「下部にただし書きを付ければ実証の負担が軽くなる」 誤認性は全体的・究極的な印象で判断され、小さな文字は隠蔽に該当するおそれがあります。ただし書きは、実証された主張の条件を知らせる場合にのみ有用です。
- 「数値を省いて言葉に変えれば事実の主張にはならない」 「膝の負担を軽減する」のように数値がなくても効果を主張していれば実証の対象になります。「業界最高水準」のように、かえってより強い主張になることもあります。
- 「資料があるのだから表現は自由だ」 資料は広告の主張と直接の関係がなければなりません。素材試験、実験室の条件下での結果、あるいは別の対象における結果は、その範囲内でのみ根拠となり得ます。
- 「会社が直接実施したアンケートも調査結果である」 実証用の調査は、事業者から独立した機関が代表性のある標本と適切な質問項目を用いて実施しなければなりません。無料の体験モニターに実施した自社アンケートは、この要件を満たすことが困難です。
- 「競合他社名を出さなければ比較広告には当たらない」 消費者がどの会社であるか特定できるのであれば比較広告であり、取引通念上同等でない対象と比較して消費者を誤認させるおそれがある場合は、不当な比較になり得ます。
- 「特許を取得しているので効果も証明されている」 特許の登録は効能を認めたものではありません。特許の事実と効果の主張は切り離して判断されます。
- 「公正取引委員会から資料の提出を求められたら、その時に用意すればよい」 実証は広告を掲載する時点で可能でなければならず、要請後の提出期限は15日であり、延長事由も限定されています。
ひと目でわかるまとめ
| 質問 | 覚えておくべき点 |
|---|---|
| 誰が責任を負うか | 広告を行った事業者。他の事業者にこれを行わせることも禁止(第3条) |
| 4つの類型 | 虚偽・誇張、欺瞞(隠蔽・脱落・縮小)、不当な比較、誹謗(施行令第3条) |
| 誤認性の基準 | 通常の注意力を持つ消費者(特定の集団を対象とする場合はその集団)、全体的・究極的な印象、意図の有無は不問、おそれだけで十分 |
| 実証の対象 | 事実に関する事項=資料によって真偽を判断できる主張。主観的判断や許容される広告的表現は除外 |
| 実証の手続き | 事事前に実証可能であること、要請を受けた場合は15日以内に提出、未提出の状態で広告を継続した場合は中止命令(第5条) |
| 実証資料の要件 | 方法(試験・調査・専門家・文献)、客観的な手続き、直接の関係、独立した機関(施行令第4条) |
| 最上級表現 | 最大・最高・初・第一・唯一は、明白な立証があって初めて使用可能 |
| 比較 | 対象が同等、基準が同一、独立機関による試験、重要事項の脱落禁止 |
| 価格 | 従前取引価格は直近約20日間の実際の販売価格(変動がある場合は最安値) |
| AI表現 | 新技術の活用表現も実証要請の主要な対象(2026年9月3日改正告示) |
公式ドキュメントで確認する
- 表示・広告の公正化に関する法律(韓国): 第2条(定義)、第3条(不当な表示・広告の禁止)、第5条(実証)、第7条(是正措置)、第9条(課徴金)、第10条(損害賠償)。
- 同法施行令第3条: 4つの類型の定義。第4条は実証用の試験・調査の方法と独立機関の要件を定めています。
- 表示・広告内容の実証に関する運営告示: 実証対象の例(AI新技術表現を含む)、提出期間および延長事由、資料ごとの判断基準。
- 不当な表示・広告行為の類型及び基準指定告示: 誤認性・阻害性の判断基準、価格、品質・性能、排他的表現。
- 比較表示・広告に関する審査指針: 比較対象・基準・方法の適正性と具体例。
- 欺瞞的な表示・広告審査指針: 隠蔽・脱落・縮小の定義と判断方法。
セルフチェック
1-1. 表示広告法(韓国)が禁止する不当な表示・広告の4類型を記述し、各類型が生成AIの草案において現れる典型的な例を1つずつ挙げてください。
1-2. 次の4つの表現を実証が必要なものと必要のないものに分け、理由を記述してください。「一度使えば虜になる香り」、「累計会員数50万人」、「3つの味から選ぶ楽しさ」、「専門シェフ12名が開発」。
1-3. 実証運営告示(韓国)が実証資料に求める3つの一般要件を記述し、そのうち生成AIの草案を点検する際に最も崩れやすい要件とその理由を説明してください。
1-4. ある健康マットレスブランドが、店舗の来店客150名に従業員が直接アンケートを実施して得た結果を広告に使用しようとしています。実証運営告示(韓国)の調査結果の判断基準のうち、問題となり得る項目を2つ以上挙げてください。
1-5. 割引バナーの「定価」表示を点検する際に確認すべき販売記録の範囲を、指定告示の「従前取引価格」の概念を用いて説明してください。
1-6. 公正取引委員会(韓国)から実証資料の提出要請を受けた日に会社が行うべき対応を、提出期限と広告中止命令の関係を含めて順序立てて記述してください。
1-7. (設計)生成AIが作成した詳細ページの草案を文単位で点検する表の列を設計してください。最低5列を設け、各列に何を記載するのかと、それを誰が記載するのかを定めてください。
実習課題
実習
AI草案の文分類と根拠照合(45分)
- 自社商品(または架空の商品)を1つ選び、生成AIに詳細ページの草案をリクエストして15文以上を受け取る。
- 文ごとに番号を付け、事実主張の有無、主張の類型(数値・順位・最上級・比較・効能・認証・価格)、必要な根拠の種類を記入する。
- 事実主張の文ごとに実際の資料を探すか「資料なし」と表示し、維持・修正・削除を決定する。
- 修正文は、資料の対象・条件・期間を反映して書き直す。
完了基準: すべての事実主張の文に根拠資料または「資料なし」が付記されており、修正文が資料の範囲を超えておらず、削除理由が1行ずつ記載されている。
実習
割引バナー点検表の作成(30分)
- 最近実施した(または架空の)割引キャンペーンを1つ決め、AIにバナーの文言を3つ作成させる。
- 品目ごとの直近20日間の販売価格、キャンペーンの割引率の分布、実際のキャンペーン期間と在庫を表にまとめる。
- バナーの「定価」、「最大割引率」、「期間・数量限定」の表現を表と照合して問題点を表示する。
完了基準: 3つのバナーそれぞれについて価格・割引率・期間の表示の真偽が判定されており、問題のある表現ごとに修正した文言がある。