第2章 推薦・レビュー・仮想人物

学習目標

  • 推薦・保証審査指針が示す「推薦・保証等」の範囲を説明し、広告主自身の文言と区別します。
  • 推薦・保証の一般原則(実際の体験、歪曲の禁止、変更・撤回、継続使用、普遍性、立証責任)を事例に適用します。
  • 経済的利害関係を表示すべき場合と例外を見分け、媒体ごとに適切な表示文言と位置を選択します。
  • AIで作成した架空の人物が広告に登場する際に必要な表示と、避けるべき表現を判断します。
  • AIでレビューを分類・要約・編集する際に許容される範囲と、越えてはならない一線を区別します。
  • インフルエンサー契約や投稿後の点検に表示義務を反映させます。

はじめに

化粧品ブランドのマーケターがこのような会議を行ったと考えてみましょう。ある人は「インフルエンサーの出演交渉費が高すぎるので、AIで本物の人間のようなモデルを作ってレビュー動画を撮影しよう」と言います。別の人は「レビュー欄の文章が乱雑なので、AIですっきりと整えて投稿しよう」と言います。3人目の人は「協賛の表示は『#協賛』を一番後ろに付ければいいのではないか」と尋ねます。3つとも効率的な提案のように聞こえますが、いずれも消費者に広告を「第三者の本当の体験」と誤認させてしまうおそれがあります。

推薦やレビューが強力な理由は、消費者がそれを広告主ではない他人の独立した意見として受け止めるからです。そのため、公正取引委員会(韓国)の『推薦・保証等に関する表示・広告審査指針』は、その信頼が裏切られないよう、3つの事項を要求しています。推薦は実際の体験や実際の専門的判断に基づかなければならず、広告主と推薦人との間の対価関係は明示されなければならず、AIで作成した架空の人物は架空の人物であることが明示されなければなりません。2026年6月1日に施行された現行の指針(例規第499号)は、架空の人物に関する規定と媒体別の表示方法を具体的に盛り込んでいます。

本章では、まず「推薦・保証等」の範囲と一般原則を確認し、経済的利害関係の表示原則と媒体別の方法を整理します。続いて、架空の人物、AIでレビューを扱う実務、インフルエンサー契約について順を追って取り上げます。

重要な概念

「推薦・保証等」の範囲

審査指針は、推薦・保証等を「広告主の意見ではなく第三者の独自の意見として認識され得る」内容と定義しています。これには2つの類型があります。

  1. 本人の使用経験や体験に基づき、商品を効能・効果・性能の面で優れた商品として評価したり、購入・使用を勧めたりする内容
  2. 専門家や団体が商品を優れた商品であると知らせたり、一般消費者に購入・使用を勧めたりする内容

表現形式は、音声、文字、署名・印鑑、写真、動画など、どのようなものでも構いません。要点は「誰の意見に見えるか」です。会社名義で書かれた「今月のおすすめ商品」は、「おすすめ」という言葉があっても広告主自身の意見であり、ブロガーが自身の体験として書いたレビューは言葉に関係なく推薦・保証に該当します。

審査指針は有名人についても定義しています。芸能人、文化芸術関係者、スポーツ選手、医師、教授、宗教家、ブロガーのように、テレビ・インターネット・SNSなどを通じて広く知られているか、消費者に影響力を行使できる人物です。インフルエンサーはこの定義に含まれます。ただし、経済的利害関係の公開義務は有名人だけにあるわけではないため、フォロワー数が少ない一般消費者であっても、対価を受け取って推薦を行う場合は表示しなければなりません。有名人がSNSで商品を意図的に露出させたり、ブランド名や商品名に言及したり、購入リンクを掲載したりすることも推薦・保証とみなされる場合があります。

推薦・保証の一般原則

審査指針の一般原則は、AI時代においてより頻繁に試されることになります。6つに整理すると次のとおりです。

原則 内容 AI関連のリスク
実際の体験・専門的判断 経験的事実に基づく推薦は実際の体験に合致し、専門的判断はその分野の専門家の合理的な判断に合致しなければならない 架空の人物の体験コメント、AIが書いた「利用者の声」
歪曲の禁止 推薦の元の内容が広告主の加工や再構成によって歪曲されてはならない AIによる書き直し、つぎはぎ編集、字幕の追加
変更・撤回 推薦人が推薦を変更または撤回した場合、当初の内容をそれ以上使用することはできない。商品が変更された場合は推薦人に通知し、改めて推薦を得なければならない 自動素材生成による古い推薦の再利用
継続使用 継続して使用しているかのように表現している場合、推薦の時点で実際に使用していなければならない 「今も愛用中」のような自動生成文言
普遍性 一般的ではない体験を普遍的であるかのように表現してはならない 劇的な事例のみを選んでトップに掲載する自動選別
立証責任 広告主が推薦内容の立証責任を負う 「単なるレビューにすぎない」という弁明は不可

要点

推薦は「他人の言葉」のように見えますが、広告に使用した瞬間、広告主がその内容を立証しなければならない広告となります。推薦人の体験を超えて一般消費者にも起こり得る事実として受け止められる場合、その部分まで立証しなければなりません。

消費者のレビュー

消費者の体験を掲げた推薦は、その消費者が商品を実際に使っていなければならず、広告に表現された内容が実際の体験に合致していなければなりません。審査指針は、実在しない消費者からの感謝の手紙や成功事例、使用せずに投稿されたレビュー、誇張された体験談、広告主が具体的な順位を付け足した感謝の手紙、特殊な体質の極一部にのみ現れる効果を一般的であるかのように紹介した体験談を、不当な例として挙げています。

AIがレビューの領域に入り込むと、これらの原則は直ちに試練に直面します。複数のレビューから良い表現だけを集めて新たな「代表レビュー」を作成すると、そのような体験をした人物はこの世に存在しないことになります。乱雑な文章を滑らかに整える過程で「少ししっとりした」が「肌が変わった」に変わってしまえば、体験の内容そのものが変化してしまいます。

有名人、専門家、団体

有名人が体験に基づいて推薦する場合は実際に使っていなければならず、専門家の立場で製品を評価する場合は自身の専門分野でなければなりません。審査指針は、歯科医師であるタレントが消化薬の効能を専門家のように語るケースを不当な例として挙げています。製品名に有名人の名前を使用すると、その人物が推薦しているとみなされる場合があります。

専門家の推薦は、実際の専門知識に基づき、その人物の判断に合致していなければなりません。無関係な分野の教授による推薦、実際には試験を行っていない専門家名義の試験結果、専門家の見解の恣意的な引用は不当とされます。

団体・機関の推薦は、評価を行う正当な地位にあり、公式な意思を反映する内部手続きを経たものでなければなりません。協会所属の個人の意見を協会の推薦であるかのように記載したり、手数料さえ支払えば推薦書を発行する海外の研究所の推薦書を使用したりすることは、不当な例です。

経済的利害関係:いつ表示するのか

広告主と推薦人との間に、推薦内容や信頼性に影響を与え得る経済的利害関係が存在する場合、広告主または推薦人はそれを公開しなければなりません。審査指針が挙げる対価には、現金、該当製品、商品券、付与ポイント、割引特典、そして広告主に直接雇用されている状態が含まれます。公開は、推薦・保証を行う案件ごとに行わなければなりません。

状況 表示の要否
商品券を受け取ってSNSにレビューを投稿 必要
製品を受け取ってインターネットカフェに推薦記事の投稿を約束 必要
購入割引を受ける条件でレビューを投稿 必要
購入後にレビューを投稿するとポイントが付与されるイベント 必要
広告主・広告代理店の社員がブログ・SNSに推薦記事を投稿 必要
ホームページ応募者全員に配布されるサンプルを受け取って使用した後、自発的にレビューを投稿 例外(表示しないことができる)
大規模イベントの参加者全員に配布された記念品を受け取り、自発的に参加レビューを投稿 例外
公開イベントの主催者側から提供された小型サンプルを業界の専門家が使用し、自発的にレビューを投稿 例外

例外の共通点は、対価がレビューの投稿を条件としておらず、受け取った人全員に同様に提供され、レビューの投稿が自発的であるという点です。レビューを投稿することを条件としてサンプルやポイントを提供する瞬間に、例外からは外れます。

表示の4原則:位置、形態、内容、言語

審査指針は、次の原則を満たしていれば適切な公開方法とみなします。

  1. 位置:推薦内容の近くに、消費者が容易に見つけられるよう、推薦と一つの投稿として認識されるように表示します。本文の途中に区別なく挟み込まれた表示、コメント欄に付けられた表示、「もっと見る」を押さなければ見えない表示は、容易に見つけにくい例です。
  2. 形態:背景と明確に区別できるサイズ・フォント・配色を用い、音声の場合は音量や速度を調整しなくても聞き取れるようにします。
  3. 内容:金銭的支援、割引、協賛など、利害関係の内容を分かりやすく明らかにします。
  4. 言語:推薦と同じ言語を使用します。
区分 適切な例(審査指針) 不適切な例(審査指針)
内容 「〇〇社から経済的対価(現金、商品券、手数料、ポイント、無料商品など)を受け取りました」、「対価性のある広告」、「商品協賛」、「#広告」、「#協賛」 「体験レビュー」、「体験モニター」、「この記事は情報/PR性の記事です」、「この記事にはPR文言が含まれています」、「プレゼント」、「〜から送っていただきました」、「#ブランド名」、「ブランド×アカウント」、分かりにくい略語
言語 「割引を受ける対価として作成」、「ポイントを受け取る対価として作成」 国内の消費者を対象としているにもかかわらず「AD」、「PR」、「Sponsor」、「spon」、「パートナーシップ」、「アンバサダー」、「Thanks to」

媒体別の表示方法

審査指針は媒体別の方法を具体的に提示しており、提示された方法でなくても4原則をすべて満たしていれば適切である場合があるとしています。

媒体 表示方法
文章(ブログ・カフェ等) タイトルまたは冒頭部分。冒頭部分の場合は本文と区別できるよう、文字を大きくしたり色を変えたりする
写真(SNS) 写真の中に入れる。写真と本文が連続しており容易に認識できる場合は文章の冒頭部分でもよい。ハッシュタグは原則として1つ目のハッシュタグ
動画 タイトルまたは動画内。タイトルの場合は省略されないよう長さを調整する。動画全体が推薦である場合は開始と終了時に入れ、繰り返し表示する(例:5分ごと)。一部のみが推薦である場合はその区間の開始と終了時に入れ、繰り返し表示する。有名人による意図的な露出である場合は動画の開始と終了時
ライブ配信(リアルタイム配信) 原則としてタイトルまたは画面上。困難な場合は音声で推薦の開始時と終了時に表示し、途中から視聴する人にも伝わるよう繰り返す

審査指針が挙げる不適切な例も覚えておいてください。タイトルの末尾に「(協賛を受けました)」を付けたもののモバイル画面ではタイトルが途切れて見えないケース、30分の配信で利害関係を1回しか口頭で伝えなかったケース、多数のハッシュタグの間に表示を紛れ込ませたケース、写真の中の文言が背景と同化して見えなくなっているケースなどです。

AI架空の人物

審査指針V.5は、人工知能などを基盤として実際と区別が困難な架空の人物(架空の人物)を作成し、推薦・保証を行う場合を扱っています。ここで人工知能は、AI基本法第2条第1号の定義に従います。

  1. 公開義務:当該推薦人がAI等によって生成された架空の人物であることを公開しなければなりません。
  2. 方法:消費者が明確かつ容易に認識できる方式でなければなりません。投稿の場合はタイトルや冒頭部分に「AIに基づいて生成された架空の人物が含まれる投稿です」や「架空の人物(架空の消費者、架空の芸能人、架空の専門家など)を含む」のような文言を、写真・動画の場合は架空の人物が登場している間、近い位置に「架空の人物」といった文言を表示することが適切な例です。
  3. 体験の表現:架空の人物による推薦が経験的事実に基づいているかのように表現されているにもかかわらず、実際の体験に合致していなければ、不当な表示・広告となり得ます。

3つ目の項目が実務において特に重要です。架空の人物には使用してみた体験が存在しません。「2週間使ってみたらキメが変わりました」のようなセリフは、いくら適切に表示を行っても実際の体験に合致することはあり得ないため、製品情報を伝えるセリフに変更しなければなりません。

参考

架空の人物に関する規定は例規第499号によって新設され、2026年6月1日から施行されました。この改正により、従来の経済的利害関係の公開項目はV.6となりました。「実際と区別が困難な」が要件であるため、誰が見てもアニメキャラクターのようなマスコットはこの規定の直接の対象ではない場合がありますが、そのキャラクターが人間のように体験談を語る場合は、一般原則(実際の体験)の問題として依然として検討しなければなりません。

AIでレビューを扱う際の許容範囲

レビュー管理にAIを用いること自体が禁止されているわけではありません。基準は「レビューの内容、すなわちその人物の実際の体験が変わってしまうか」と「消費者が受ける全体的な印象が実際のレビューの分布と合致しているか」です。

作業 判断 理由
テーマ別分類、キーワードタグ付け 許容 原文を変更しない
肯定・否定の比率と主な不満を併せて示す要約統計 許容 分布をありのままに伝える
暴言・個人情報などの運営基準に基づいて一貫して非表示にする 許容 基準が内容の良し悪しとは無関係である
スペルや誤字脱字のみを修正し、原文を併せて保存 慎重 表現が変わることで体験内容が変化しないよう原文との照合が必要
文章を滑らかに書き直して原文の代わりに掲載 危険 体験の強度や内容が変わる可能性がある(歪曲の禁止)
複数のレビューを統合して新たな「代表レビュー」を作成 禁止レベル そのような体験をした実在の消費者が存在しない
低評価のレビューを自動的に非表示にする 危険 消費者の選択にとって重要な事実の隠蔽になり得る

AIによる要約は便利ですが、要約が肯定的なレビューのみを反映していると、消費者は実際の分布を誤解してしまいます。要約には否定的な意見の比率や主な内容も併せて盛り込み、原文のレビューへとリンクさせてください。

オンラインモールの運営者であれば電子商取引法(韓国)も併せて確認してください。2026年7月21日に施行された『電子商取引等における消費者保護に関する法律(韓国)』第21条の4および同施行令第27条の3は、消費者の利用者の声を掲載する事業者に対し、作成権限を有する人物の範囲、掲載期間、等級評価基準とその効果、削除基準および削除時の異議申立手続きを、利用者の声を確認する最初の画面(スペースが不足する場合は直ちにリンクされる画面)で公開することを義務付けています。AIでレビューを非表示にしたり並べ替えたりする場合、その基準が公開された基準と合致していなければなりません。

インフルエンサー契約に盛り込むべき事項

表示義務は広告主と推薦人の双方にあります。審査指針は「広告主または推薦・保証人」が公開するよう求めており、表示広告法(韓国)第3条は不当な広告を他の事業者にさせることも禁止しています。インフルエンサーが表示を怠ったからといって広告主の責任が免除されるわけではないため、契約の段階から次の事項を盛り込んでおいてください。

  1. 対価の内容(原稿料、製品、割引など)と、投稿ごとにその内容を表示する義務
  2. 媒体別の表示文言と位置(冒頭部分、写真の中、1つ目のハッシュタグ、動画の開始・終了時および繰り返し表示)
  3. 実際の使用期間と、実際の体験に基づいて執筆するという誓約(広告主が作成した体験談をそのまま投稿しないこと)
  4. 効能や数値の表現は、広告主が実証資料を保有している範囲内でのみ使用するという原則
  5. 投稿前のドラフト確認の範囲(表示および事実に関する主張)と、投稿後の表示の削除・移動の禁止
  6. 推薦を変更または撤回する際の連絡方法

状況別の表示の選び方

表示を選択する際の判断は、4つの質問で整理できます。

  1. 推薦・保証か? 第三者の独自の意見に見えるか、それとも広告主自身の広告か。
  2. 利害関係があるか? 現金・製品・商品券・ポイント・割引・雇用関係が存在するか。利害関係が推薦内容や信頼性に影響を与えない例外的なケースか(応募者全員に配布されたサンプルをもとに自発的に書いたレビューなどがその例です)。
  3. どの媒体か? 文章、写真、動画(全体・一部・有名人の露出)、ライブ配信(リアルタイム配信)。
  4. 架空の人物か? 実際と区別が困難なAIによる人物が登場するか。体験を語るセリフがあるか。

これら4つの質問に対する回答を組み合わせることで、表示文言(何を)、位置(どこに)、形態(どのように)が定まります。

さらに深く

AI要約レビューは誰の言葉か

商品詳細ページの最上部に「AIレビュー要約:購入者の大部分が吸収が早いと評価」と表示されているとしましょう。この文章は消費者の言葉でしょうか、それとも広告主の言葉でしょうか。消費者のレビューを材料にしていますが、何を選びどのように要約するかは広告主のシステムが決定しました。消費者はこの要約を「他の購入者たちの独立した意見をまとめたもの」と受け取るため、要約が実際の分布を歪曲すると、推薦・保証の歪曲禁止原則と欺瞞(重要な事実の隠蔽・脱落)の問題が同時に生じます。

実務原則は3点あります。要約基準(どのようなレビューを、どのような比率で)をあらかじめ定めて記録します。肯定と否定を比率どおりに盛り込み、繰り返される不満(香り、容量、配送)を除外しません。要約の横に原文レビューへと移動できる導線を設けます。要約モデルの結果は、定期的に原文の標本と照合して一方に偏っていないか点検します(第4章の評価方法を参考にしてください)。

ブランドが運営するバーチャルインフルエンサーのアイデンティティ

ブランドが直接運営するバーチャルインフルエンサーのアカウントは、二重の表示問題を抱えています。一つは架空の人物であるという事実であり、もう一つはそのアカウントが広告主自身であるという事実です。フォロワーがそのアカウントを独立したインフルエンサーとして受け取る場合、アカウントによるおすすめは「第三者の独自の意見」のように見えるため、推薦・保証の問題として扱わなければなりません。

架空の人物の表示は、投稿ごとに消費者が明確かつ容易に認識できるようにしなければなりません。文章はタイトルや冒頭部分、写真・動画は架空の人物が登場している間、近い位置に表示することが審査指針の適切な例であり、プロフィールの自己紹介欄に1回記載するだけでは不十分とみなすのが安全です。同時に、そのアカウントがブランドの運営する広告アカウントであるという事実も消費者が容易に把握できるようにし、体験型のセリフの代わりに商品情報を伝える形式でコンテンツを設計してください。

従業員、代理店、アフィリエイトマーケティングの境界

従業員参加型キャンペーンは費用があまりかからず反応も良さそうに見えますが、審査指針は広告主や広告代理店の従業員がおすすめの投稿をする場合を経済的利害関係の例として明記しています。従業員が自発的に投稿した場合であっても、雇用関係そのものが利害関係であるため表示が必要です。会社がAIで文面の文例を作成して配布し、それをそのまま投稿させると、表示の問題に加えて実際の経験要件まで揺らぐことになります。

アフィリエイトマーケティング(購入リンクを通じた手数料)も同様です。審査指針は、手数料を受け取るブログのおすすめ記事に「所定の手数料を受け取っています」といった表示を行うことを適切な例として挙げています。リンクを1つ貼るだけで表示なくおすすめする投稿は、利害関係を隠したおすすめになります。

実務の場面

ぶどう粒キャンプ:ライブ配信とショート動画の再編集

キャンプ用品ブランドの「ぶどう粒キャンプ」は、新製品のテント発売に合わせて3名のクリエイターと契約しました。1名は90分のライブコマースを進行し、もう1名は20分のキャンプVlog(ブイログ)のうち4分間でテントを紹介し、3人目は写真中心のSNS投稿を5件行います。マーケティングチームは、ライブ配信をAI編集ツールで切り抜いて30秒のショート動画を10本作製し、ブランドアカウントに投稿する計画も立てました。

担当者は媒体ごとに表示方法を分けました。ライブ配信では配信タイトルに「協賛広告配信中」と入れ、進行役が冒頭と末尾、そして途中にも繰り返し広告料を受け取っている旨を発言するようにしました。Vlogはタイトルを変更したくないというクリエイターの要望を受け入れつつ、テント紹介区間の開始時と終了時にテロップを入れ、紹介している間も繰り返し表示するようにしました。写真投稿では、写真の中に背景と明確に区別できる「協賛を受けています」という文言を入れ、ハッシュタグを使用する場合は1番目に「#協賛」を配置するようにしました。

問題はショート動画でした。AIが切り抜いた30秒のクリップには、ライブ配信時の協賛への言及が含まれない可能性がありました。チーム長は「ブランドアカウントに投稿するのだから広告であることは明白だ」として表示を省略しようと提案しました。担当者は、クリップ内のクリエイターの言葉が視聴者には依然として第三者のおすすめのように聞こえる点を挙げ、クリップごとに画面上に「有料広告を含む」のテロップを入れることにしました。また、AI編集が「このテントなしではキャンプができません」といった文章ばかりをつなぎ合わせ、本来の文脈よりも強いおすすめのように見えないか、人間が確認するステップを設けました。見送った選択肢は「概要欄に1回表示」「プロフィールに協賛アカウントと明記」であり、どちらも見つけにくい位置であるという理由で却下しました。

一日工房:AI架空モデルとレビュー要約

革小物ブランドの「一日工房」は、モデル撮影を行う代わりにAIで実際の人と見分けがつかない30代のモデルを生成し、カードケースの広告動画を制作しました。企画案には、モデルが「1年間毎日使っていますが、角がまったく擦り切れていません」と話すシーンがありました。詳細ページには、2,300件のレビューをAIで要約した「購入者のひとことレビュー」を最上部に配置しようとしました。

担当者はまず動画から修正しました。モデルが登場している間、顔の近くに「架空の人物」という文言を表示させ、「1年間毎日使っていますが」というセリフは架空の人物が経験し得ない内容であるため削除しました。その代わりに「角の仕上げに使用した革と縫製方法」を説明するセリフへと変更し、耐久性に関する主張は会社が保有する摩耗試験データの範囲内でのみテロップに記載しました。マーケターは動画末尾のクレジットに「AIで制作」と1回入れれば十分ではないかと主張しましたが、登場している間に近い位置という基準を満たさないため採用しませんでした。

レビュー要約については、AIが作成した最初の結果が「革の香りが良く丈夫だ」という称賛一色でした。原文をサンプルとして確認してみたところ、レビューの18%が「カードがきつくて入りにくい」という不満でした。担当者は要約基準を再設定して肯定・否定の比率と上位2件の不満を併せて提示するようにし、要約の下に原文レビューの一覧をそのまま続けました。星評価2点以下のレビューを自動的に折りたたんでおこうという提案は、隠蔽とみなされるおそれがあるという理由で却下しました。

間違えやすいポイント

  1. 「『おすすめ』という単語がなければ推薦・保証ではない。」 基準は単語ではなく、第三者の独自の意見と見なされるかどうかです。逆に、会社名義の「おすすめ商品」は広告主自身の意見です。
  2. 「告知ページで1回知らせればよい。」 経済的利害関係は、推薦・保証を行う案件ごとに、おすすめ内容の近くに表示しなければなりません。
  3. 「『#協賛』がどこかにあればよい。」 ハッシュタグは原則として1番目の位置であり、複数のハッシュタグの間に紛れ込ませたり、コメント欄や「もっと見る」の中に配置したりすると適切でない場合があります。
  4. 「『AD』『Sponsored』は国際標準であるため十分だ。」 国内の消費者を対象としたおすすめにおいて、外国語表記は同一の言語とはみなされません。
  5. 「架空の人物と表示すればセリフは自由だ。」 表示とは別に、架空の人物の体験談は実際の経験に合致し得ないため、不当な広告となるおそれがあります。
  6. 「実際の顧客レビューをAIで整えることは編集にすぎない。」 元の内容が広告主の加工・再構成によって歪曲されてはなりません。複数のレビューを統合代表したレビューは実在しない経験です。
  7. 「サンプルを提供した場合は無条件に表示しなければならない。」 応募者全員に無条件で提供したサンプルにより自発的に執筆されたレビューは、表示を行わなくてもよい例外にあたります。レビューの投稿を条件とした場合は例外になりません。
  8. 「表示はインフルエンサーが自ら判断して行うべきことだ。」 審査指針は広告主または推薦者が公開するよう定めており、法は他の事業者に不当な広告を行わせることも禁止しています。

ひと目でわかるまとめ

質問 覚えておくべきこと
推薦・保証 第三者の独自の意見として認識され得る、経験に基づく評価・勧誘と専門家・団体の推奨
一般原則 実際の経験・専門的判断、歪曲の禁止、変更・撤回時の使用中止、「継続使用」の表現は実際に使用中であること、普遍性、広告主の立証責任
利害関係 現金・製品・商品券・ポイント・割引・雇用。案件ごとに表示
例外 条件なしの全員向けサンプル・記念品 + 自発的なレビュー
表示原則 位置(近く・冒頭部分)、形態(区別できる大きさ・色)、内容(対価が明確に)、言語(同一言語)
媒体 文章=タイトル・冒頭部分、写真=写真内・1番目のハッシュタグ、動画=タイトルまたは開始・終了+繰り返し、ライブ配信=繰り返し
架空の人物 架空の人物であることを明確に(登場している間に近く)、体験セリフの禁止
AIレビュー 分類・分布の要約は可能、書き直し・合成代表レビュー・選別的な隠蔽は危険

公式ドキュメントで確認する

セルフチェック

2-1. 次の中から推薦・保証審査指針の「推薦・保証等」に該当するものを選択し、その理由を記述してください。(ア)ショッピングモールのMDが会社名義で執筆した「エディターズピック」の文言、(イ)購入者が自らの経験に基づいて投稿した星評価レビュー、(ウ)皮膚科専門医が番組で特定のクリームを勧めるシーン。

2-2. 審査指針が経済的利害関係の表示の例外として挙げる状況の共通条件を、3点に整理して記述してください。

2-3. ブログの投稿、写真中心のSNS投稿、動画の一部でのみおすすめを行う動画のそれぞれについて、表示文言をどこに配置すべきかを1行ずつ記述してください。

2-4. 「体験モニター」「#ブランド名」「Thanks to ○○」の3つの表現が適切な表示として認められない理由について、審査指針の4原則のうちどれと結びつくかを明らかにして説明してください。

2-5. AIで生成した実在の人間のようなモデルが広告に登場する際、表示だけでは解決されない問題が何であるかを説明してください。

2-6. レビュー1,000件をAIで要約し、詳細ページの最上部に表示しようとしています。要約基準を策定する際に盛り込むべき3つの項目を記述してください。

2-7. (設計)インフルエンサーとの契約書に盛り込むべき表示関連の条項を5つ以上記述し、各条項が審査指針のどの原則を遵守するためのものであるかを紐づけて説明してください。

実習課題

実習

メディア別協賛表示ガイドの作成(40分)

  1. 自社が利用している(または利用予定の)メディアを4つ以上選ぶ(ブログ、写真SNS、ショート動画、長尺動画、ライブ配信など)。
  2. メディアごとに表示文言の例、位置、形態(サイズ・色・繰り返し周期)、やってはいけない例を表にまとめる。
  3. 各欄の横に根拠となった審査指針の文章を短く引用する。

完了基準: 4つ以上のメディアについて文言・位置・形態・禁止例がすべて記入されており、欄ごとに審査指針の根拠が付記されている。

実習

AIによるレビュー要約の点検(40分)

  1. 公開されている商品レビュー50件以上(自社または架空のデータ)を集め、肯定・否定・中立に自分で分類して主な不満を書き出す。
  2. 同じレビューを生成AIに与えて詳細ページ用の要約を作成させる。
  3. AIの要約が自身で分類した割合と主な不満を反映しているか照合し、抜け落ちている部分や誇張されている部分に印を付ける。
  4. 要約基準(割合の表示、不満の反映、原文へのリンク)を指示文として修正し、再度要約させる。

完了基準: 初回の要約と修正した要約の違いが表に整理されており、修正した要約が否定の割合と主な不満を含んでいる。